大分県で生まれ育ち、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。ハーバードを首席で卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業。現在はテレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』のコメンテーターとしても活躍しています。すみれさんが学び、実践してきた「考える力」を、いかに個人や組織で実践するか? 事例やエピソードとともに、わかりやすく紹介します。

歯磨きPhoto: Adobe Stock

なまけがちな脳に刺激を入れるため
自分と向き合う時間を設けてみよう

私たちが生まれて最初に身につける習慣は、「歯磨き」だという説があります。

その後も数々の習慣が積み重なり、30歳を超えると生活のほとんどは習慣化しているとも言われます。

習慣化には「頭で考えなくていいので動作効率がよくなる」という長所がある反面、「毎日同じことのくり返しなので中途半端になりがち」という短所もあります。

歯磨きでも、またはストレッチでも、5分間メソッドや3分間メソッドでタイマーをセットして、短期集中してみるといいかもしれません。

ある英語記事で「歯磨きは飽きる前に大事な箇所から磨く」と書いてあるのを読み、そんな視点で歯磨きを考えたことないな、と思わず苦笑いしました。

日本のテレビでお馴染みの齋藤孝・明治大学教授は、タイマーを片手に話をするそうです。

時間を区切って、その間、集中して話をするのです。

この考え方も、私の5分間メソッドに近いと思います。

脳には考えることを極力避けようとする傾向があるそうです。

というのも、考えるということは、エネルギーを消費するからです。

脳の重さは全体重のわずか2%ほどしかありませんが、1日の全消費カロリーの20%を使います。

それほどまでに脳の神経細胞は「考える」という作業にエネルギーを大量消費するのですから、エネルギーを浪費しないように、考える時間をできるだけ節約しようとするらしいのです。

アメリカの哲学者ジョン・デューイは、「人間は習慣の生き物である」という言葉を残しましたが、その背景には考える時間を節約しようとする脳の戦略があるのかもしれません。

歯磨きのように習慣化して無意識化してしまうと、考えることにエネルギーを割かなくて済むようになります。

自動運転の電気自動車(EV)は、近い将来、ドライバーが何も考えなくても、目的地まで連れて行ってくれるようになるでしょう。

これと同じように、人間が何も考えなくても、さまざまなことをAIが代わりにやってくれる領域が、どんどん広がってくるはずです。

そんな社会の進化の流れに乗ったままボーッと生きていると、運動不足だと筋力が衰えて弱体化してしまうように、脳もみるみる衰えてしまうかもしれません。

自分の存在価値を高めるためにも、考えることをタスク化して、5分単位で「自分と向き合う」時間をつくってみてはどうでしょうか。

時間は3分間でも7分間でも、自分が好きな時間でOKです。

海外では「瞑想」が流行っていますが、身のまわりの素朴な疑問や1日のふり返り、仕事上の新しいプロジェクトの構想なども、空白の時間が5分間もあれば、かなり頭が働きます。

これを食事の後でも、お風呂に入っているときでも、寝る前でもいいので、1日1回の習慣にしてみると、いい頭の体操になります。

私にとっては幼い頃から書き続けている日記の時間が、それに相当します。

こうした「自分と向き合う時間」は日々の生活に刺激を与えてくれるので、私はとても大切にしているのです。