大分県で生まれ育ち、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。ハーバードを首席で卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業。現在はテレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』のコメンテーターとしても活躍しています。すみれさんが学び、実践してきた「考える力」を、いかに個人や組織で実践するか? 事例やエピソードとともに、わかりやすく紹介します。
異なる個性のグループ活動で
リーダーシップを身につけよう
ハーバードの2年次からは、大学中心部から歩いて15分ほどの距離にある寮に移りました。
こちらは1棟で400人ほどが暮らす大規模な建物で、「ハウス」と呼ばれていました。
その大規模なハウスは全部で12棟もあり、その中で私は「ダンスター・ハウス」と呼ばれる寮に入りました。
2年次からの寮には多くのルームプランが用意されており、1人部屋、2人部屋、3人部屋と好みに応じて学年順・抽選順に選べます。
私は一緒に住みたい友達がいたので、2年次は3人部屋、3年次と4年次は2人部屋を希望しました。
ハウスでは毎週1回は「スタディ・ブレイク」と呼ばれる催しがあります。
寮長を務めている教授のもとに寮生が集まって、コーヒーを片手に教授の奥さんが焼いたケーキやクッキーなどを食べたりして親睦を深めます。
こうした数々の行事や催しを通じて、同じ屋根の下で暮らしている400人には目に見えない強い絆が築かれていきます。
寮ごとにマスコットも決まっていて、これも結束の強さにつながっています。
ダンスターのマスコットはヘラジカだったので、イベント時にはイラストつきのスウェットを着たり、皆でヘラジカの角を頭につけたりしていました。
いまでもハーバード出身者同士が出会うと、真っ先に聞くのは専攻でも何でもなく、「あなたはどこの寮だったの?」ということです。
卒業後も寮の仲間同士とのつながりは脈々と続きますから、それがビジネス面でも貴重な人脈として有利に働きます。
ハウスでは1つのコミュニティとなり、スポーツ試合や季節のイベントなど、学業以外のさまざまなイベントを主催しますが、ハウスの外でもほぼ全員が、何らかの学校規模の学生団体に属します。
絶対に所属するように義務づけられているわけではないのですが、何でもやりたがるタイプが多いハーバード生は、複数の団体に属していることが珍しくありません。
私自身は、学生オペラプロダクションのプロデューサーや弦楽アンサンブルの部長を務めつつ、その他にも米国最古の学生オーケストラ「ハーバード・ラドクリフ・オーケストラ」や、日本の文化を紹介する「ジャパン・ソサエティー」という合計で4つの団体に所属していました。
これらの学生団体は、活動に必要な資金集めに始まり、組織づくり、役職選挙、関係者との交渉、現場でのオペレーションまで学生たちが自ら担います。
私も含めてハーバードでは卒業後に起業する人も多いのですが、こうした学生団体での活動が起業のシミュレーションにもなっているのです。
その活動を通じて、起業やビジネスにも役立つリーダーシップやチームワークが自然と学べます。
活動のプロセスで仲間を盛り立ててリーダーシップを発揮する局面もありますし、さまざまな国籍や文化的背景、性別といった異なる個性の仲間たちと協業するには、共感性とチームワークが求められます。
仕事はひとりではなくチームで取り組むものですから、ビジネスでは必然的にリーダーシップとチームワークが必要となります。
学生団体での活動で身につくこれらの能力は、その後のビジネスの現場でも大いに役立つのです。