大分県で生まれ育ち、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。ハーバードを首席で卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業。現在はテレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』のコメンテーターとしても活躍しています。すみれさんが学び、実践してきた「考える力」を、いかに個人や組織で実践するか? 事例やエピソードとともに、わかりやすく紹介します。
ハーバードは入試も寮生活も
ダイバーシティを大切にする
ハーバードではダイバーシティ(人材の多様性)が、かなり重視されています。
そのため、ハーバードの入試では同じような人材が集まらないように、国籍、性別、個性、得意分野が異なる学生たちを意図的に選んでいます。
2018年にアジア系の学生が、ハーバードの入試で差別されているという訴訟を起こしました。
テストの成績が同じ場合、白人は35%、ヒスパニック系は75%、アフリカ系は95%が合格になるのに対して、アジア系アメリカ人は25%しか合格していないというデータが、その根拠の1つになりました。
しかし、ハーバードの入試で、テストの成績は判断材料の1つにすぎません。
スポーツや音楽といった学業以外の活動、ボランティア活動、面接を踏まえた人物評定などを総合的に加味して、意図的に個性的な人材を集めているのです。
ハーバードは一部を除くと「全寮制」です。
私が入学した4年制の学部である「ハーバード・カレッジ」は、1学年がおよそ1600人。
4学年合わせて6400人以上の学生が、寮で暮らしています。
1年次は「フレッシュマン・ドーム」と呼ばれる小さな寮で暮らします。
フレッシュマン・ドームは全部で15棟ほどあり、大学のメインキャンパス内の便利な場所にあります。
入学前に大学が実施するアンケートに対して、「私はみんなとワイワイ楽しみたいから8人部屋がいい」「勉強に静かに打ち込みたいから1人部屋がいい」といった希望から、「自分は真面目なタイプだからあまりパーティをしない人と一緒がいい」「音楽の趣味が合う人と一緒がいい」といった同室者についての希望まで書きます。
質問事項も「勉強中に音楽を聴くタイプですか?」「自分の性格をどう説明しますか?」「起床と就寝の時刻は?」など細かい項目があり、きめ細かくマッチングしてくれます。
私が住んだ最初の寮は、インド系アメリカ人とフランス系アメリカ人との3人部屋でした。
共有のリビングルームがあり、個室が2つ。
そのうち1部屋には2段ベッドがあり、2人で共有します。
公平に1人部屋が使えるように、3人で数ヵ月に1回はローテーションして、どの部屋を使うかを民主的に決めていました。
1年次の部屋割りを大学側が決めているのは、寮の中で人種などのバックグラウンドが偏らないようにするためです。
個性あふれる同級生たちと寮で一緒に暮らしているうちに、さまざまな考え方や価値観に否応なしに触れることになります。
それは日本の地方都市で育った私の視野を広げてくれましたし、異なる立場から複眼的に物事を考える姿勢にもつながりました。