山地で伐採した木材を利用するには、それを市場まで届けるための輸送インフラを整える必要があります。山地ごとに輸送インフラを整えるには時間と費用がかかりすぎてしまいます。そのため山道を整備して森林伐採するよりは、安価な外材を輸入したほうが効率は良く、日本の木材自給率は36.6%(2018年)とそれほど高くありません。
しかし、近年は木材自給率が向上しています。これは、
・合板製造業において国産の間伐材利用が増加したこと
・ロシアが針葉樹原木の輸出関税の引き上げを行ったこと(これにより日本の輸入量減少)
・戦後に植樹された樹木が成長し伐採時期に至ったものが増えていること
などが背景にあります。日本は特にカナダ、アメリカ合衆国、ロシアからの木材輸入が多くなっています。
中国の次なる一手は?
近年、日本は木材の対中輸出が増えています。これは中国国内の事情によるところが大きいようです。中国は国土面積が大きいとはいえ、森林面積率は23.03%しかありません。そのため国民1人当たりの森林面積は非常に小さい国です。
近年の木材消費量の増加を背景に、環境保護の観点から一部の省や自治区で天然林の伐採を全面禁止としました。こうしたことを背景に、日本に供給先を求めています。
日本は山地林の活用は難しいのですが、先述のように植樹された樹木の成長によって伐採時期に至ったものが増えてきました。特に九州地方からの対中輸出が増えています。
また日本では外国資本による森林買収が増えており、林野庁によると、2019年の取得者は法人・個人問わず中国が最多でした。2006年から2019年までの間の統計をみると、最も買収されたのは北海道のニセコ町、ついで倶知安(くっちゃん)町、蘭越(らんこし)町となっています。すべてリゾート地ですね。
さて、木材は「丸太」、もしくは「製材」の形で取引されます。世界最大の丸太輸出量(2018年)を誇るのはニュージーランドです。
ニュージーランドは主に北島と南島に分かれており、南島ではサザンアルプス山脈が縦断します。これが偏西風を遮るため、風上側となる山脈の西側は多雨地域となります。
ホキティカという都市の年降水量は約2800㎜であり、降水量が多い地域です。こうした自然環境を背景に、森林地帯が広がり林業が発達しています。またニュージーランドは人口が約490万人と少ないため国内消費量が少なく、木材の多くが輸出されています。ニュージーランドの輸出品目第3位は「木材」です(1位は「酪農品」で、2位は「肉類」)。
余談ですが、王子製紙はパルプ工場をニュージーランドのネーピアという都市に設立し、この都市にちなんで「ネピア」というブランド名を作りました。
(本稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)