世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。
木材争奪戦が始まっている!
本日は「木材」という資源についてお話しします。
木材伐採高が多い国は、基本的に国土面積が大きい国です。それもそのはずで、国土面積が広ければ、オーストラリアのように乾燥気候が広く展開していない限り、森林面積が広くなります。
実際に世界の木材伐採高(2018年)はアメリカ合衆国、インド、中国、ブラジル、ロシア、カナダと、上位国は国土面積が広い国で占められています。
木材伐採高の内訳は「用材」と「薪炭材(しんたんざい)」に分類されます。用材はその名の通り「何かに用いられるための木材」のことで、建築用材、家具用材、パルプ用材などがあります。
一方の薪炭材は燃料として用いられる木材のことです。樹木は針葉樹と広葉樹に分類されます。針葉樹材は英語で「softwood」といい、軟らかくて軽いため、輸送に便利でまた加工しやすい樹木です。さらに真っすぐ生えていて、「くるい」が少ないこともあって建築用材としての利便性が高いです。種類は約500と少なく、亜寒帯(冷帯)地域では針葉樹の純林地帯(タイガ)が形成されます。
これは目的の樹種を見つけやすいという利点となり、林業が発達します。
欧米諸国は温帯から亜寒帯気候の地域が多く、森林面積に占める針葉樹の割合が比較的高くなっています。針葉樹の伐採高(2017年)はアメリカ合衆国、ロシア、カナダ、中国、スウェーデンが上位国です。
一方の広葉樹材は英語で「hardwood」といい、硬くて重いため、輸送が大変です。また「くるい」が多く、曲がって生えていることが多いため加工が大変です。そのため建築用材よりは、家具や楽器、パルプ、薪炭材などの材料として利用されます。種類は約20万と豊富であり、森林の多くが雑林となっています。広葉樹の伐採高(2017年)はインド、中国、ブラジル、アメリカ合衆国、インドネシアが上位国です。
日本は、国土面積に対する森林面積の割合が68.4%と高く、そのうち82.6%が針葉樹林です。そして日本は約73%が山地・丘陵地であるため、標高の高い場所に森林が多く、針葉樹割合が高い国です。しかし、平地林よりも山地林が多いため、物理的にも経済的にも伐採が困難です。