保険料の納付要件を満たさないと
公的年金の給付が受けられない

「年金」というと、「老後にもらうもの」というイメージを抱きがちだが、日本の公的年金保険は、次の3つの経済的リスクをカバーできる設計になっている。

●老齢年金…現役世代に比べて安定した収入のなくなる老後の生活を支える年金
●遺族年金…加入者の死亡後に残された家族の生活を支える年金
●障害年金…病気やケガをして障害が残った場合の生活を支える年金

 老齢年金は、高齢期の生活を支えるためのものなので、給付を受けられるのは原則的に65歳になってからだ。若い世代は、メリットを実感しにくいところがあるかもしれない。また、遺族年金は、扶養する家族のいる人が死亡した場合に支払われるものなので、子どものいない人などは給付の対象にならないこともある。

 だが、3つ目の障害年金に関しては年齢や性別にかかわらず、誰にでもお世話になる可能性がある。病気やケガをして障害が残り、仕事や生活に支障が出ることは、老若男女問わずいつでも誰にでも起こりうることだからだ。

 このように公的年金保険は、障害年金を備えているために、誰にとっても不可欠な保障となっている。こうしたリスクを包摂するために、日本では皆年金制度をとって、国籍に関係なく、この国で暮らす20~60歳までのすべての人に、公的年金保険に加入することを義務付けている。

 公的年金保険は強制加入の国の制度ではあるが、大本の仕組みはあくまでも「保険」だ。そのため、加入者には保険料の負担が求められる。保険は、予測される経済的リスクに備えて、事前に多くの人が少しずつお金を出し合って、病気やケガ、死亡などの保険事故に遭って困っている人を救済するものだ。いわば、相互扶助の仕組みで成り立っているので、給付を受けられるのは、保険料の納付義務を果たした人に限られる。たとえば、若い世代の人も受給する可能性のある障害年金は、次の2つの保険料納付要件のいずれかを満たしていることが条件だ。

・初診日がある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料を納付(または免除)していること
・初診日が65歳未満で、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

 この2つのうち、いずれかの要件を満たしていないと、たとえ大きな事故に遭って障害が残っても障害年金をもらうことはできない。これは負担と給付をバランスさせ加入者全体の保障を守るためのルールだが、ある意味シビアな制度でもある。