2040年までにEV・FCEVを100%に
新社長が掲げた壮大なビジョン
今春、前任の八郷隆弘社長の後を継ぎ、ホンダ復活を一身に背負って新社長に登板したのが三部敏宏社長だ。本来であれば6月の定時株主総会で社長交代をするのが通例のところ、前倒しで4月1日にトップ交代する異例のバトンタッチだった。
「2050年にホンダに関わるすべての製品と、企業活動を通じたカーボンニュートラルを実現させる。2040年までにホンダの新車のEV(電気自動車)・FCEV(燃料電池車)比率はグローバルで100%を目指す」
三部新社長は、就任会見でホンダの「脱エンジン」を宣言して、就任早々に世間をあっと驚かせた。かつてホンダは、米マスキー法の厳しい排ガス規制を世界で初めてクリアしたCVCCエンジンの開発など、独自のエンジン開発にこだわりがある。また、歴代のホンダトップはエンジン開発畑が主流で、三部社長もエンジン開発畑の次期エースと言われてきた人物だ。
それにもかかわらず、三部ホンダ体制は地球環境への取り組みとして世界的な脱炭素・カーボンニュートラルの実現へ、思い切った「脱エンジン」を宣言したのだ。
同時に安全への取り組みとして2050年にホンダの二輪車・四輪車に関与する交通事故死者ゼロを目標とすることも宣言。環境と安全を主体に、今後6年間で総額5兆円の開発投資をすることも明言した。
さらに、三部新社長はこうした表面的な技術投資だけでなく、「ホンダらしさとは、『本質を考え抜いた末にたどり着く価値』そして『独創性』だ。本質と独創性にこだわり続ける」と、長らく陰りを見せていた“ホンダらしさ”の復活も強調した。
八郷隆弘前社長からバトンを受け力強くスタートを切った三部ホンダ新体制に、いま“ホンダ復活”への期待が大きく寄せられているのである。
しかし、この40年から50年に向けて華々しい目標を掲げる一方で、足元の業績打開、とくに四輪車事業の収益力には課題が山積している。
いわば、三部ホンダ新体制の“光と影”が浮き彫りになっているのだ。