電動車化対策に加えて
国内市場での方向にも課題

 一方、海外でのEVの投入計画が話題になる一方で、日本国内市場において1~6月の本年上期の新車販売のメーカー別ランキングでホンダが4位に転落したことも報道された。新車販売で、トヨタ自動車のトップに続き、スズキとダイハツ工業にも抜かれてホンダが4位以下となるのは、東日本大震災が起きた11年以来10年ぶりのことだ。半導体不足による減産幅が大きく、特に軽自動車主力工場の鈴鹿工場が2月と5月に一時生産停止したことが影響したようだ。コロナ禍の影響から回復トレンドにある国内市場だが、半導体不足による生産調整ではメーカーごとで明暗が分かれている。

 それでなくとも「ホンダは、日本国内は軽自動車メーカーか」と揶揄(やゆ)されるほど、ここ数年はホンダの国内軽自動車販売依存が強まっているのだ。N−BOXシリーズの軽自動車で量は稼げても、収益力ではどうのなのか。中国・北米での販売は好調のホンダだが、母国である日本市場での方向性をどうするかも課題であろう。

 6月23日に開催されたホンダの定時株主総会では、三部新社長の「脱エンジン」に対して「創業者の本田宗一郎氏が悲しむのではないか」との質問も飛び出した。これに対し「50年にカーボンニュートラルを達成するのが目標。EVとFCEVを本命にしつつ、(既存のエンジンが活用できる)水素を使った合成燃料の研究も進める」と三部社長は答えた。

 稼ぐ力の復活を優先し今季限りで撤退するF1が皮肉にも5連勝しているが、多くの経営課題を内包しつつ三部ホンダ新体制は始動した。環境と安全でリードできるホンダの方向と足元の業績立て直しをどう折り合いを付けていくか、その成り行きが注目される。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)