3人目の子供を産むことを容認すると決めた中国だが、出生率が過去最低となり、今後は急激な人口減少と高齢化に直面することは避けられない。所得再分配政策の実現が急務だが、そんな中国社会と経済にこそ「論語と算盤」の教えが有効だと考える。(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 瀬口清之)
人口出生率は0.85%と過去最低を記録
日本を超えるスピードで超高齢社会に
中国の国家統計局は5月、日本の国勢調査に当たる第7次人口センサスの結果を公表した。2020年の出生者数は1200万人、人口出生率は0.85%と、1952年の統計開始以来、過去最低となった。
長年「一人っ子政策」を進めてきた中国政府は、2016年から夫婦が2人目の子供を持つことを認め、今年5月31日の政治局会議では、さらに3人目の出産を認めると決めた。
人口減少は当然、経済規模の縮小につながり、日本のように社会保障の担い手の不足につながる。中国では今後、2025年の段階で、人口の14%を65歳以上の高齢者が占める「高齢社会」に、2036年にはそれが21%となる「超高齢社会」になると試算されている。
日本はこの高齢化率が、1994年に14%、その13年後の2007年に21%に達したが、中国のそれは11年とさらに短くなるとみられており、中国社会の人口減少と高齢化に、今後ますます拍車がかかることになる。
中国は14億人という世界最大の人口規模を誇り、日本を含む各国の企業が魅力的な市場として参入してきた。また都市部を中心とした経済成長は世界経済の成長エンジンの役割を果たし、経済以外の面でも中国の世界的な影響力の源となって来た。
その人口が減少に転じた場合、中国国内で経済や社会にどういった問題が生じるのか。また、人口減少に直面した中国社会が大過なく安定を維持するために、中国政府がどうした施策を取るべきか、そして一足早く超高齢社会に入った日本がどのような協力ができるのかを考察したい。