老朽化したマンションなのに、新築より高い理由
長い間、私はある摩訶(まか)不思議な問題に悩まされていた。
実家は上海の浦東新区というエリアにある。その近くに、梅園新村と呼ばれるコミュニティーがある。日本風に言えば、公営住宅だ。1980年代に建てられたものだが、建築材料や日常管理、メンテナンスなどの問題もあり、老朽化している。
しかし、この中古マンションが売り出されると、その面積、築年数、環境、質などのどれをとっても、新築のマンションより劣るのに、販売価格は、新築にまったく引けを取らないどころか、上回るケースがある。老朽化しているのに、億ションだらけだ。どうしてこのような値が付くのか、さっぱり理解できなかった。
そこで、ある日、母に聞いてみたら、母は淡々と「あそこは学区房なのだ」と答えた。そこで疑問は氷解した。
浦東新区は長い間、上海の田舎だった。1987年、浦東にはガスもまだ引かれていなかった。しかし、同年9月28日、梅園新村に入居した148世帯が初めてパイプラインから送られてきたガスを使用するようになった。
1992年、中国国務院により「国家の重大発展と改革開放戦略の任務を受け持つ総合機能区」である国家級新区とされて以降、浦東は目覚ましく発展した。2010年の上海万博の開催地でもあったため、いまや高級住宅街が多く、外資系会社が集中するエリアにもなっている。
しかし、それでも大きな欠陥がある。偏差値の高い小中学校(=中国では重点学校という)が少ないのだ。