ヨーロッパでは、茶が栽培できない

 茶の栽培は、高温多雨で、水はけが良く、また風通しの良い場所が適しています。そのため、イギリスはおろか、ヨーロッパで茶を栽培している地域はほとんどありません。そこでイギリスは茶を低コストで大規模生産するために植民地での栽培を始めました。

 この頃、中国種とアッサム種(インドのアッサム地方で発見)の交配が進み、この交配種の栽培が盛んになっていきました。こうして旧イギリス植民地のインド、ケニア、スリランカでの栽培が盛んになっていきます。

 また旧オランダ植民地のインドネシアも同様です。植民地での茶の栽培は現在においても伝統的に行われており、こうした農業はプランテーション農業と呼ばれます。

 特定の農作物の栽培に傾注するプランテーション農業は、市況の影響を強く受けるため収入が不安定となりやすいなどの弱点も持ち合わせます。また、商品作物を栽培して輸出、外貨を獲得し、それを使って自給用穀物を輸入するため、外貨の蓄積が進まないという問題もあります。

 インド、ケニア、スリランカは茶の生産だけでなく、輸出も盛んであり、2017年の茶の輸出量はケニア、中国、スリランカ、インド、ベトナムが上位国です。

 ベトナムは中国文化が伝わった国としても知られ、すでに9世紀には中国から茶の文化が導入されたといわれます。そのため南部よりも中国に近い北部で茶の文化が広まっています。

 フランス植民地時代にはヨーロッパ向けの茶の栽培が行われており、現在でも茶の生産・輸出が盛んな国として知られています。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)