本書の要点

(1)「頑張ったら支援します」「やる気のある人を応援します」といった言葉は、頑張れない人たちを突き放したり見捨てたりする厳しい言葉となりえる。頑張れない人には、認知機能が弱い、自己実現欲求以前の欲求が満たされていないなど、本人の意思以外の理由があるかもしれない。
(2)本人が「頑張りたい」と思っていても、周囲の何気ない声かけでやる気を削いでしまったり、支援者が本人の意向を無視して頑張らせなかったりして、結局本人が不幸になってしまう場合もある。
(3)頑張れない人でも、本人の特性に沿った支援をし続ければ、強みを引き出すことは十分可能だ。

要約本文

【必読ポイント!】
◆頑張りたくても頑張れない現実
◇「頑張ったら支援します」という言葉の裏

「頑張ったら支援します」「やる気のある人を応援します」といった言葉は一般的によく使われる。だがこれは、裏を返せば「もし、あなたが頑張らなかったら、支援はしません」という意味にもなる。つまり、支援が必要な「頑張れない人」を突き放したり見捨てたりする、厳しい言葉になりえるのだ。

 一方、現代社会においては、「頑張らないで生きよう」「嫌なことは我慢しない」といったキャッチコピーを見かけることがある。これらは頑張りすぎている人たちへの言葉であって、頑張れない人たちや彼らを支援する人たちは額面通りに受け取るべきではない。支援者が本人の意向も考えず、この言葉を鵜呑みにしたり、苦手なことをやらせたらかわいそうだと考えたりすれば、本人の可能性を奪ってしまうかもしれない。

◇頑張れないとどうなる?

 なんらかの形で頑張らなければ、この社会を生き抜くことはできない。つまり、「頑張らなくてもいいよ」という安易な声かけは無責任なものになりかねないし、相手が直面している課題をどんどん先送りにしてしまうリスクがある。