たとえば、計算が苦手な子に「頑張らなくてもいいよ」と言うとしよう。子どもたちの多くは進んで勉強したいわけではない。そんな中で「やらなくてもいいよ」と言われると、お墨付きをもらったと思い、ますます勉強しなくなるだろう。その結果、どんどん授業に置いていかれ、同級生との会話にもついていけず、孤立したり、いじめに遭ったりするかもしれない。

「無理をさせる」と「頑張らせない」は違う。あとで辛い思いをするのは本人だ。

◇評価されなければ「できた」とは言えない

「頑張る」「頑張らない」以前の問題として、「できる」と「できない」はどう違うのか。できるかどうかは自己評価ではなく、他者評価だ。結果を出して評価されて初めて、「できる」という状態になる。つまり「頑張ったらできる」とは、「学校や会社など、どこかで認められる結果を出す」ということだ。いくらゲームが得意でも、学校や会社などで認められない限り、変人扱いされたり、評価されなかったりする。

 ところが、一見無駄な活動に見えても、それがお金になれば評価は一転する。そのいい例が、eSports(eスポーツ)のプロ選手だ。eSportsの世界では、大会の優勝賞金は10億円を超え、海外であれば年収が1億円を超えているプレーヤーもいる。もし自分の子どもが、いくら引きこもってゲームばかりしていたとしても、実はeSportsで億単位のお金を稼いでいたとしたらどうか。急に「頑張っている」という評価に変わるはずだ。

 好きなことで食べていければ一番いいが、それができる人は限られている。多くの人はあまりやりたくないことを頑張らなければならない。好きなことでなくても頑張らなくてはならない社会は、頑張れない人にとってはとても生きにくいものだ。

◇頑張れない理由

「頑張れない人」は、なぜ頑張れないか。そこには「認知機能」の弱さが関係している。認知機能が弱い人は、見る、聞く、想像するという力が弱く、入ってくる情報に歪みが生じて、結果が不適切な方向に向いてしまうのだ。そうして失敗を繰り返すうちに、やっても無駄だと思い込んでしまい、頑張れなくなる。自分を正しく評価できず、自分には問題がないと思い込むこともある。