◇見通し、目的、使命感でスイッチを入れる

 本人の特性に沿った支援をし続ければ、頑張れない人の強みを引き出すことは十分可能だ。では、何がそういった強みを引き出すのか。支援者が知らない、これのためなら頑張れる、といったものをもっていて、そのスイッチが入れば頑張れる人もいる。支援者の役割は、そのポイントを見つけ、スイッチを入れることだろう。

 本人がやる気を出すためには、「見通し」「目的」「使命感」という3つのステップが必要だ。まず、人はいつまでこの状態が続くのか、どれだけ頑張れば報われるのかという「見通し」がないと、努力し続けられない。認知能力が弱く、見通し力が弱い場合は、イラストなどでわかりやすく図示する、すべきプロセスをいつも壁に貼っておくといった工夫をするといいだろう。

 見通しが持てたら、次は「目的」だ。ある大学に入れる見通しがあっても、目的がないとなかなか頑張れない。有名大学に入りたいから、法律を勉強したいから、就職に有利だからなど、何でもいいので、目的を持つ必要がある。

 最後に必要なのは、「使命感」だ。「自分の人生にとってどんな意味があるのか」「社会にとって自分のやっていることはどんな意義があるのか」がわかれば、頑張りやすくなる。

 見通し、目的、使命感の3つに共通するのは、「幸せになりたい」という気持ちだ。頑張れない人たちの中には、振り込め詐欺をして儲けたお金を母親に仕送りするといった具合に、「幸せになりたい」という気持ちが先行して安易な手段を選んでしまう人もいる。そこで支援者には、彼らの「幸せになりたい」という気持ちを正しい方向に導いていく役割が求められる。

◆支援者はどうすればいいのか
◇支援者の3つの立場

 支援が本当に必要な頑張れない人たちは、たいてい周りに「助けて」とは言ってこない。それどころか、嘘をつく、約束を破る、問題行動をするなど、支援者を遠ざけるような行動に出ることもある。そのような行動が続くと、支援者は「あなたのことを考えてやったのに……」と落胆してしまうだろう。無力感や怒りなど、さまざまな葛藤を抱えながらも支援に携わる側の行動としては、次の3つがある。