ミニマリズムやシンプルライフの延長に「FIRE」がある

――今と昔では「早期リタイア」のイメージがずいぶんと変わってきているんですね。

岩本 イメージがどこまで変わってきているかは、正直私にもわからないんですが、TwitterやYouTubeなどインターネットで検索してもらえれば、「FIRE」を目指す人が増えているのは一目瞭然ですね。特に、トレンドに敏感な若い世代に広がっているのはたしかです。

――若い世代に広がっている要因はどういったところにあるのでしょうか?

岩本 ひとつには物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを重視する、そういう価値観を持つ人が若い世代に多いからだと思います。

 さきほども言いましたが、「FIRE」の根幹は支出の最適化なんです。『FIRE 最強のリタイア術』にも書いてありますが、モノを買うことで得られる幸福感は一瞬で、持続的ではない。それでは人は幸せになれないんです。

 では、どうしたら幸せになれるかと言ったら、やはり、自由に好きなように自分の時間を使うことができる、その実感を得られることだと思うんです。恋人でも、家族でもいいんですが、本当に自分の好きな人たちと時間を過ごすとか、自分の好きなことをやる時間が十分にあるなど、そういう生き方に幸せの根幹がある。

 それを実現するための一つの手段が「FIRE」なんです。

――たくさんのお金でぜいたくに暮らすことではなく、支出を最適化することで、本当の意味での自由な時間を手に入れる。それが「FIRE」の根幹なんですね。

岩本 まさにその通りです。10年前くらいからミニマリズムとか、シンプルライフが流行ってきているじゃないですか。むしろ、その考え方に近いのだと思います。たくさんモノを買って、自分が欲しいと思ったものに囲まれていても、結局は虚しい。幸福感を感じられない。

 そういう生活を目指すのではなく、むしろもっとシンプルに、ミニマルに暮らそう。そんな考えが先に流行っていたことで「FIRE」が受け入れられやすかったという側面はあると思います。下地ができていた、というか。

――ミニマリズム、シンプルライフの延長に「FIRE」があると言われると、すごくイメージしやすくなりますね。若い世代に受け入れられているのも納得がいきます。