こうして通勤・移動を分解してみると、非効率な部分や嫌な部分だけでなく、良かった部分、残したい部分もあったことが分かります。そこで、これまで私は、通勤や移動に費やしていた時間と完全に同じでなくても構わないので、休憩プラスアルファの時間を「自分時間」として確保してみることにしました。
この自分時間では、近所を小まめに歩きながらポッドキャストを聴いたり、仕事の合間にスマートフォンでニュースアプリを開いたりしています。会議と会議の間のすきま時間には、わざわざ近所のコンビニに買い物に行き、読書の時間も確保。通勤・移動がなくなって失われた、いい面だけを再現するようにしました。
通勤を「悪」か「善」かで二分して考えてしまうのではなく、このように分解して考えてみれば、効率化の陰で失ってしまった価値あることに気づいたり、それを良い部分だけ復活させる方法を考えたりすることが可能になります。これが「分解の思考」の効用です。
シンプルかつミニマムに考えたい
ときに役立つ「分解の思考」
分解の思考は、起業や新規事業に取り組むときにも役立ちます。
新規事業の立ち上げでは「MVP(Minimum Viable Product:顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)」と「PoC(Proof of Concept:新しいアイデアの実現可能性を実証すること)」の考え方が重要です。つまり、最小限のプロダクトとして成立するものが、ビジネスとしても成立するかどうかを検証する、と考え方です。
新規事業に取り組むときには、誰しも既存のアセットを生かしたくなるものです。企業であれば現在の事業や人材、サプライチェーンなどを応用する、あるいは起業家なら、これまでの知識や経験を基に新しいものを考えれば、発想がしやすいからです。しかし、この方法で新規事業を考えるときに陥りがちなのが、さまざまな要素をあれもこれもと詰め込んでしまうことです。これを整理するには、一度詰め込んだ要素を分解して、真の最小単位を考えてみる必要があります。