例えば、「流通株」を35%以上にするために、創業家に持ち株を放出してもらったり、株式を保有する親密取引先企業に対して保有目的の区分を「政策投資」から「純投資」に変えてもらったりするなどの対策がある。

 しかし、あえて言いたい。プライム上場を維持することに大きな意味があるとは限らない。個々の企業は、この機会に自社が何のために上場しているのかをよく考えてみるべきだろう。

「プライム落ち」=「TOPIX除外」
というわけではない

 上場企業が必ずしもプライム市場にこだわらなくてもいい最大の理由は、「プライム落ち」が直ちに「TOPIX(東証株価指数)からの除外」を意味するわけではないからだ。TOPIXから除外されると、日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの機関投資家が大量に保有するTOPIX連動のインデックスファンド(3月末時点で50兆円以上ある)の投資銘柄から外れる。その結果、数パーセントの安定株主を失うことになる。株主対策上、「数パーセント」が大きな問題になる企業は存在するに違いない。

 しかし、まずTOPIXは株価指標としての連続性を保たなければならない。指標として、2000年4月に銘柄入れ替えを実施した日経平均株価のような「不連続」を引き起こしてはまずい。また、採用銘柄の変更や銘柄のウェイト変更の際に、インデックスファンドの売買が他の市場参加者(主に高速取引業者や証券会社の自己売買部門)に利用される恐れがある。そうなればインデックス自体が下方バイアスを持って、インデックスファンドの保有主体が損をする問題が起こりかねない。

 こうしたもろもろの問題が懸念されて、市場区分とTOPIXとの間の対応は直接的なものとはされないことになった。

 市場区分の再編と共にTOPIXも改訂されるが、変化は段階的で緩やかであり、また見直し後のTOPIXの「浮動株時価総額ウェイト」は、現在のTOPIXの99%以上をカバーすると予想されている(「証券アナリストジャーナル」2021年7月号、能木絵美「TOPIX(東証株価指数)等の見直しの概要」による。能木氏は東京証券取引所 情報サービス部インデックス・グループ 運用企画課長である)。

 新TOPIXの採用銘柄の条件及び移行措置もそれなりに複雑だが、主な採用基準は「流通時価総額100億円以上」だ。

 つまり大まかに言うと、「プライム」から外れても流通時価総額が100億円以上ある上場企業は、TOPIXに採用され続けてインデックスファンドの保有対象となる。