唐揚げ人気の秘訣は
多様性時代に対応できる柔軟性の高さ

 2020年にニチレイフーズが行った「好きなおかずランキング」(※2)によると、焼き肉やギョーザなどの人気具材を破って、唐揚げが堂々1位に輝いている。また、同調査によると、全体の約80%が月に1回以上のペースで唐揚げを食べており、なんと年間の唐揚げ総消費量は400億個にも上る(推計値)。さらに、コロナ渦の影響を受けて、前年比167%見込みと急成長を遂げた。

 また、唐揚げが数カ月間のブームに収まらず、これだけ長い間人気を保っている理由は、何といっても唐揚げならではのフレキシブルさにあるのではないだろうか。まず、おかずランキングで1位に君臨していることからも分かる通り、唐揚げは非常に扱いやすい具材である。

 一口に「唐揚げ」と言っても、塩味やしょうゆ味など、味のバラエティは無限大だ。また、さまざまなソースとの相性も良く、ポン酢ダレやマヨネーズ、タルタルソース、ねぎソースなど、そのバリエーションは多岐にわたる。また、カレーやラーメン、そばなどのトッピングや、おにぎり、サンドイッチなどの具材としても使える、いわば主役にも脇役にもなれる変幻自在の食べ物なのである。

 さらに、弁当や白米など、日本の食文化にマッチしているというのも大きい。肉自体は元々白米と相性が良いとされているが、中でも鶏肉はヘルシーで価格も安い。そして何より、唐揚げは子どもたちにも喜んで食べてもらえる。そのため弁当のおかずとしても人気だ。ソースのレパートリーを変えれば、手作り弁当の欠点でもある「ワンパターンによる飽き」も防ぐことができる。このメリットだけを見ても、唐揚げはコスパの良い具材であるといえるのではないだろうか。

 また、気軽にテイクアウトができるというのも、現代の家庭事情に適しているといえる。昔と比べ、現在では、女性の社会進出や高齢化などが原因で、家庭で揚げ物をする機会が減少している。油の処理などに手間がかかるからだ。

 ここで、唐揚げをテイクアウトした場合と、自分で調理した場合のコストの違いを分析してみよう。人気唐揚げ専門店の価格を見てみると、調理済みの唐揚げは、100gあたり250円前後で販売されていることが多い。一方、自炊するとなると、スーパーの鶏もも肉が100gあたり大体110円から150円だ。しかし最も量が少ないものでも150g~200g以上あるものがほとんどであるため、165円〜300円の間で値段が変わる。また、唐揚げ粉を使用する場合、さらに100円ほど上乗せされる。さらに、自分で調理をし、油の後始末までしなければならないことを考えると、コスパが良いといえるかは疑問が残る。