日本の切り札「野戦病院」の設立

 そこで、デルタ株の感染拡大に対して、医療崩壊を絶対に起こさないための「最後の切り札」をあらためて提案したい。自衛隊による「野戦病院」の設立である。

 自衛隊に対して都道府県知事から「災害派遣」(参照:陸上自衛隊『災害派遣の仕組み』)という形で要請する。まずは、関西圏と首都圏の知事からの要請で、関西圏は伊丹か宇治、首都圏は朝霞の自衛隊駐屯地に「野戦病院」を設置する。そして、大阪、東京などの入院患者を移して、新規入院者の受け入れを行う。

迫る医療崩壊、日本が英国に学ぶべき「野戦病院」のつくり方本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 病床は、関西圏は伊丹・宇治を合わせて、関東圏は朝霞に、中等症用病床2000床、重症用病床1000床をそれぞれ設置する。野戦病院としては規格外の大規模なものになるので、全国の自衛隊病院に約1000人ずついる医官、看護官から可能な限り集約する。自衛隊中央病院の医師・看護師も派遣する。そして、これまで現場で新型コロナ患者に対応してきた公立・民間病院の医師・看護師も可能な限り野戦病院に派遣する。

 そして、自宅療養の軽症者が、重症化した際には、野戦病院への移送を「災害活動」として自衛隊が直接担うことにする。軽症者の情報を自衛隊に集約しておき、容体が悪化したら即、対応して野戦病院に運ぶことにするのだ。

 このように、たとえデルタ株に感染して自宅療養から重症化しても、病院にも入れず死を迎えるような「医療崩壊」の悲劇は絶対に起きないと、国民がひとまず落ち着ける医療体制を構築することである。これは、すべての既得権を打破して、万難を排して行うべきである。

 そして、医療体制の崩壊に対して、ただ国民に行動制限を求め続けるだけで、まったくの無策であった政府と専門家は0点の評価だと断ぜざるを得ない。即刻総入れ替えに値すると、何度でも強調しておきたい。