無観客五輪開催という異常事態は、ワクチン確保に失敗した政府の無策が招いたPhoto:Takashi Aoyama/gettyimages

東京五輪は、一部地域を除き、無観客で開催することが決まった(12日正午現在)。一方、英国のスポーツイベントは観客も入り、大盛り上がりだ。ぼうぜんとする日本政府と、正常化に戻りつつある英国政府の差はどこで生まれたのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

無観客の決定には賛成だが、日本人としては悔いが残る

 私は、五輪は開催で進めるべきだと主張してきた(本連載第274回)。五輪のホスト国として、開催には国際的な責任があり、「感情的」に投げ出すことが許されるような、軽い問題ではないからだ。

 ただし、安全対策、各競技会場での観客数などは、科学的・論理的に決定されるべきだ。

 まず、これまでの国内外で開催されたさまざまな個別競技のイベントから得られた知見を生かす。そして、従来にない大規模イベントである五輪で起こりうる問題を一つずつつぶしていき、観客数を決める。最終的には無観客もあり得る。ギリギリまで検討して判断すればいい。

 だから、私は「無観客」開催の決定に賛成である。

 だが、4度目の「緊急事態宣言下」での「無観客」での五輪開催には、日本人としてどうしても悔しい思いがある。

 これが「ロンドン五輪」だったならば、通常通りに開催し、「新型コロナに対する人類の勝利」を高らかに宣言する大会になっただろうと痛感するからだ(第271回)。