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スマートフォンの理想と現実

「NTTドコモからiPhoneは出るのか?」
素朴な疑問から浮かび上がる最大手キャリアの課題

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第37回】 2012年11月14日
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 それでも、LTEという新しいサービスに、分かりやすい意味を提供できた意味は大きい。特に端末が事実上2年縛りになる中で、最初の印象をよくしたことで一定程度の満足感が継続できるとなれば、この先はもちろん、さらに買い替えのタイミングとなる2年後にも、一定の競争力を維持できることになるだろう。

あちらを立てればこちらが立たず

 これほどまでに明確な違いが生じ、その中心にiPhoneがあるのだとすると、NTTドコモとて、現状を打破するためにiPhone参入に踏み切るという可能性がある――おそらく昨今の噂話はこうしたところに端を発しているのだろう。そして確かに、NTTドコモが踏み切る可能性は、近年で一番高いのかもしれない。

 しかし現状では、NTTドコモ全体の経営課題という観点で考えると、必ずしも合理的な判断とは思えない。理由の一つは、端末調達での衝突である。

 iPhone5のCPUであるA6は、現時点ではSamsungが製造している。この契約は少なくとも来春まで続くと見られている。この契約において、Appleは相当な優位にあり、Samsungの製造設備を優先的にAppleが使えるという状況にあるようだ。

 そうだとすると、iPhone5のバックオーダーを抱える限り、(Samsung製品を含む)iPhone5以外向けのCPUの製造能力は、一定程度制限されることになる。すなわち、NTTドコモがiPhone5に参入するとなると、もう一つの主力製品であるSamsung GalaxyやNote向けのCPU製造(NTTドコモから見ればそれらの調達)に影響が生じる、ということになる。

 また、ここまで交渉がこじれた状況でNTTドコモが仮に参入となれば、おそらくAppleから相当規模のコミットメントを求められることになるだろう。たとえばSBMが買収したスプリント・ネクステルは、かつてのiPhone参入時に、6000万弱の契約数に対して3000万台程度のコミットメントを飲んだという噂がある。

 NTTドコモもスプリント・ネクステルとちょうど似たような契約数であり、またマーケティングの観点でも同様の課題を抱えているとすれば、さもありなん。そしてこれだけの台数を確保するとなれば、Samsungの生産状況にもより大きな影響が及ぶのは必至である。すなわち、iPhoneを取るかSamsung端末を取るか、という状況を、自ら招くことになりかねない。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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