多少のインフレには目をつぶり、需要に圧力をかけ続けて成長を目指す「高圧経済」政策で、米国のコロナ禍からの景気回復が本格化し始めた。「バイデノミクス」は需要超過圧力をかけることで、企業の雇用拡大や生産性向上への投資を促し、成長力を高めることが狙いだ。マクロ政策が供給サイドに働きかける新たな試みは、「長期停滞」が指摘される先進国経済を活性化できるのか。特集『ポストコロナの新世界』の#4では、「高圧経済」政策をテーマに、元日本銀行理事の門間一夫・みずほリサーチ&テクノロジー・エグゼクティブエコノミストに、コロナ後のマクロ政策の潮流を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
需要に超過圧力をかけ続け
生産性向上の努力を促す「高圧政策」
――米国のGDP(国内総生産)がコロナ禍前の水準に戻り、株価も最高値を更新。バイデン政権の「高圧政策」の効果といわれています。
高圧政策というのは、財政や金融のマクロ政策で経済を不況から正常に戻すだけでなく、需要超過の圧力をかけ続けて、需給が引き締まる状態まで意図的に経済を過熱させる政策です。そうすれば、労働参加率の上昇や生産性引き上げ努力などの供給サイドの望ましい変化が起きて、中長期的な成長力も強化されるという考え方です。
近年では、イエレン米財務長官がFRB(米連邦準備制度理事会)議長の時代、リーマンショック後の米国の生産性が上がらない状況下で言い出しました。FRBも昨年8月にまとめた「戦略の見直し」で、雇用最大化を優先し、インフレ率が2%を超えても一定期間は緩和を続ける政策を打ち出しています。
その後、バイデン政権が発足して「大きな政府」路線に転換し、財政政策でも、インフラ投資や子育て支援などの大規模な財政出動を打ち出しています。
ただし、高圧政策をやる場合には、前提条件があります。