「ラク」に「早く」を突き詰めて

――「洗濯機のない人生」が「洗濯機のある人生」に変わるって劇的な変化ですね。

寺澤:そうなんですよ! マクロを知らない人にはぜひとも知ってほしいですし、「知ってるけど、難しいんでしょ」と敬遠している人、過去に挫折してしまった人にも、一度この本を使ってマクロを体験して欲しいですね。

 そして、仕事をするときに、いきなり手を動かし始めるのではなく「これって、マクロを使ったら、もっとラクにできるかも」と思えるようになって欲しい。手作業で4時間かかる仕事を頼まれたとき、マクロの存在を知らない人はがんばって手を動かすしか選択肢がない。

 でも、マクロを知っていれば1時間でマクロを組んで、残りの3時間を浮かすことができる。自分ではできなくても、周りのマクロができる人に依頼することだってできる。マクロを知れば、業務効率化の選択肢が増えるんです。

 エクセル仕事に限りませんが、本当に優秀な人は常に「もっとラクにできないか」「もっと早くできないか」を考えていますからね。

――お話を聞いていると、寺澤さんは「効率的であること」にとても強いこだわりを感じます。もともとそういう性格なんですか?

寺澤:それはあるかもしれません。高校生くらいからその片鱗は出ていましたね。

 たとえば、私は日本史選択で大学を受験しました。当時、東大の日本史の試験問題は四問しか出ませんでした。古代、中世、近世、近代から一問ずつ出題され、配点はそれぞれ15点。

 でも、近代はその他の時代と比べ文献が明確に残っていて、覚えなければいけないことが多い。そのうえ、登場人物の思惑も複雑で覚えるのがたいへんです。それだけ苦労して勉強しても同じ15点にしかならないのなら、江戸時代までに絞って勉強しよう。そう思って、私は近代を捨てたんです。

 必要最小限のことをやって、できるだけ大きな効果が得るにはどうしたらいいかを考えるのが、もともと好きなんですね(笑)。ちなみに、私は数学が得意なんですけど、文系に行ったのもその理由です。

――どういうことですか?

寺澤:数学が得意なら「数学ができない人のところへ行った方がいい」という考えです。だから、私は理系ではなく、文系を選びました。

 私が東大を受験したとき、数学は満点を取りました。80点満点の試験ですが、数学が苦手な人は1問しか解けないこともあります。すると、その人たちの得点は20点ほど。その時点で60点のアドバンテージがある。もし理系の人たちのなかに入ったら、このアドバンテージはまったくなくなります。だから文系にしたんです。

――寺澤さん的には文系でも、理系でもどっちでもよかったってことですか?

寺澤:究極を言えばそうです(笑)。

――ドラゴン桜の考え方ですね(笑)。

寺澤:たしかにそうですね。『ドラゴン桜』では、まず勉強の効率をあげることを考えたうえで、「オマエは理1へ行け、文2へ行け」と受験を考えています。これを見て、なんとなく灘高の考え方に似ていると感じていました。

 余談ですけど、のちに『ドラゴン桜』の編集者の佐渡島庸平さんが同じ灘高出身だと聞いて、「あー、やっぱり!」と妙に感動したのを覚えています。