日々、与えられた仕事を真面目に、コツコツこなしている人は多い。しかし、いま求められている効率化や生産性向上に必要なのは「真面目に働く」ことではなく「もっとラクにできないか」を考えること。その一つの解決策として、多くの人の読まれているのが『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』という一冊。どうしたら、時間のかかるルーティンワークを効率化できるか。日々の事務仕事をラクに、早く終わらせられるか。今回は著者の寺澤伸洋さんに、この本を出版した思いを聞くとともに、自身の東大受験のエピソードを通して「徹底した効率化」にこだわる理由を探ってみた。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)
「マクロを知っているかどうか」だけで差がつく
――寺澤さんは「エクセルマクロを使った業務改善セミナー」も積極的にやられています。今回の本ではそのノウハウをわかりやすく、簡潔に伝えています。「エクセルマクロを推奨する」根本には、どういう思いがあるのでしょうか。
寺澤伸洋(以下、寺澤):私が伝えたいのは「『マクロというものを知っている人』と『知らない人』とでは、業務効率に決定的な差がついてしまう」ということ。だから、せめてマクロの存在だけでも知ってほしい。そこが一番強いですね。
多くの人が事務作業をするときに、ただがんばるのではなく「これってマクロでやったらラクなんじゃない?」と思って欲しいということです。
実際、職場を見渡してみると、真面目に仕事をしている人はすごく多い。これは本当に素晴らしい。でも、真面目な人ほど仕事を振られたらすぐに何時間も手を動かしてしまう。たいていは仕事が早くて正確なので、手を動かせばそれなりに仕事をこなしてしまえます。
――すごくよくわかります。
寺澤:でも、そういう人こそマクロの存在を知るべき。とんでもなく業務が効率化されますから。これは、家事と家電の関係で考えるとわかりやすいです。
たとえば、洗濯機を知らない人が真面目に洗濯しているとします。働き者なので、洗濯板とたらいを使って何時間も手を動かし、丁寧に洗います。洗濯物はとてもきれいになる。
でも、洗濯機の存在を知っている人は「その時間も労力ももったいない」と思うでしょうね。洗濯機を使えば、あっという間に洗濯は終わりますから。洗濯物と洗剤を入れて、ボタン一つ押せば、あとは別のことができます。実際に使うかは別としても、ラクできる手段が選択肢にあるのは大きな差になります。
また、最近の家電であれば、ホットクックのような調理家電でしょうか。これまで通り料理をしようとしたら、鍋を火にかけ、時折かき混ぜたり、火加減を調節したりする必要があるので、ずっと鍋の前にいなければなりません。
一方、ホットクックを使えば、具材を入れてボタンを押せばしばらくすると自動で料理ができます。
もちろん、ホットクックを使った方がいい料理と、そうでない料理は当然あると思います。でも、ホットクックの存在は知っておいた方がいい。知っておけば「この料理はホットクックを使えば、もっとラクになるのではないか?」と思えるようになる。
それがエクセルにおいての「マクロ」なんです。しかも、マクロはエクセルにもともとついている機能です。家電のように新たに買う必要もありません。
――なるほど。たしかに、マクロを知っているのと知らないのとでは、効率化という点で決定的な差がありそうです。
寺澤:だから私は「マクロのセミナー」をやったり、マクロを簡単にマスターできる本を書いたりしています。
『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』なら、パソコン初心者の方でもマクロを体験できます。1章ずつでも試しながら進んでいけば、必ずマクロが身につきます。私のセミナーは基本的には6時間のコースですが、6時間やったらホントに人生変わりますよ。