「おくすり手帳」を持っていくと
医療費が1回40円安くなる

「おくすり手帳」は、医薬品による健康被害を防ぐための重要アイテムだが、普段薬局で支払う医療費の面でもお得になる。

 薬局に支払われる報酬は、「調剤報酬」と呼ばれており、国が一律に単価を決めている。そのなかで、「おくすり手帳」に関する料金は、「薬剤服用歴管理指導料」に含まれている。

 手帳に情報提供してもらうと、医療費が高くなった時期もあったが、それは過去の話となっている。「おくすり手帳」の普及を促すために、16年の診療報酬改定で、手帳を持参した人の医療費が安くなるように見直されており、20年4月からは次の2段階の料金に変わっている(健康保険の自己負担割合が3割の場合)。

1. おくすり手帳あり。同一薬局を3カ月以内に利用した場合…………130円
2. おくすり手帳なし。複数の薬局を利用するなど上記以外の場合……170円

 20年3月までは、大病院の前にある門前薬局やグループ薬局など、処方箋の受け付け枚数が極端に多い薬局を利用した場合は、おくすり手帳を持参しても指導料は安くならなかった。だが、この規定も20年4月に撤廃され、現在は規模に関係なく、どこの薬局を利用しても、前回の利用から3カ月以内に「おくすり手帳」を持参すると、指導料が1回あたり40円安くなるようになっている。

 つまり、利用する薬局を1カ所に決めて、「おくすり手帳」を持っていくようにすれば、薬局での医療費を節約できるというわけだ。

 毎回、決まった薬局に行き、複数の医療機関で処方された薬を1冊の手帳で管理するようにすれば、飲み切らなかった薬の調整をしてもらったり、問題のある多剤投与を減らしたりすることも容易になる。

 近年、日本では自然災害が頻発しているが、東日本大震災や熊本地震などの被災地では、「おくすり手帳」を持っていた人は、避難所でもスムーズに診療や投薬を受けられている。

 ワクチン接種によるアナフィラキシーショックだけではなく、交通事故などに遭って意識不明の状態となっても、「おくすり手帳」を携帯していれば、医師や薬剤師などの医療者は、そこに書かれている情報から適切な治療をしてくれる。

 日常的に薬を服用している持病のある人はもちろんのこと、健康で普段は医療機関を受診することのない人も同様だ。「おくすり手帳」に何も書かれていなければ、それは「服用中の薬はない」という情報となり、相互作用を疑わずに薬を選択できるようになるからだ。

 1冊の手帳が、命を左右することもある。薬局に行けば、「おくすり手帳」は無料でもらうことができるし、薬局によってはスマートフォンなどでアプリ対応しているところもある。今回のCOVID-19のワクチン接種をきっかけに、「おくすり手帳」を携帯することの大切さを改めて考えたい。