子どもの言葉を否定せず、「そうかぁ」とそのまま受け入れる。そのうえで、次に「君はどうしたいの?」と子どもの意志を確認する。自分で考えておらず、問題が起きたら人のせいにする癖がついている子どもの場合、すぐには答えられないはずだ。

 そこですかさず、「先生にできることはある?」と手を差し伸べる。「先生にできることといったら、別室を用意してあげることくらいかな。どうする?」と言えば、たいていは「じゃあ別室にいます」となる。そうして「1時間でいいかい?」「1時間でいいです」といったやり取りをしていく。

 このときのポイントは、かならず最後に自分で判断して決めてもらうことだ。麹町中学校では、子どもたちにひたすら自己決定を繰り返してもらう。すると子どもたちは次第に自分で考えるようになり、当事者意識が芽生えてくる。自己決定の機会が増えると自己肯定感が高まり、不登校やいじめもやがてなくなっていく。

◆キーワードその2「メタ認知能力」
◇メタ認知は客観視ではなく俯瞰視

 子どもたちが自らを成長させ、幸せな状態をつくり出せるような脳を育てること。それが教育の本質的なゴールだ。心理的安全性は、その実現に欠かせない「状態」であり、メタ認知能力はそのために必要な「スキル」と言える。

 メタ認知とは、「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能」だ。自分自身を対象化し、他人を見るように自分を見る。その点では客観視と同義だが、ひとつの定点からではなく、複数の定点から見なければ学びは得られない。あくまで「客観視」ではなく「俯瞰視」なのである。

 たとえば日記や日報を考えてみよう。自分を客観的に振り返るにはよい素材だが、ただ書くだけだと学びは得にくい。内容を横断的に見ることで、はじめて「自分はこんなトピックについてよく書くな」「こんな状況のときはこんなことを感じやすいんだな」というパターンが見えてくる。

◇メタ認知能力を高める内省

 メタ認知能力を高めるためには、自分と向き合うこと、すなわち内省が必要になる。

 内省の機会を持つほど、外部情報を処理するときに内部情報(自分に関する情報)も同時に発火するような回路が脳に生まれる。すると不満があったり物事がうまくいかなかったりしても、他人や社会のせいにせず、「自分にもやれることがあるかもしれない」という発想ができるようになる。これが当事者意識である。