ハーバード大教授が提言、日本がコロナ後に「2%以上の経済成長」を実現する方策Photo:PIXTA

デルタ株が猛威を振るい、急速な新型コロナウイルス感染拡大が続いている日本。コロナ禍収束の兆しが見えない中、これからの日本経済はどうなるのか。ハーバード大学国際開発センター経済成長研究所で所長を務めるリカルド・アウスマン教授は、「エネルギー転換」が今後の日本の経済成長に大きな影響をもたらすと指摘する。日本企業の最重要課題とは何か、解説してもらった。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

>>前編より続く

2020年の対策は通用しない
デルタ株の脅威にどう立ち向かうか

佐藤 日本国内の新型コロナウイルス感染者数は100万人を超え、死者も1万5000人を超えています。この結果をどう見ますか。

アウスマン 日本はこれまで行動制限と「検査・追跡・隔離」によって感染を抑制してきましたが、他の国や地域に比べても今のところ死者数を抑えられていると思います。1万5000人といえば、私の住むマサチューセッツ州の死者数1万9000人とほぼ同じレベルです。日本の人口は1億3000万人で、マサチューセッツ州の人口は700万人です。日本はマサチューセッツ州の25分の1程度に抑えられている。これは評価すべきだと思います。

 一方、ワクチン接種の遅れは明らかに失敗です。デルタ株の猛威による急激な感染拡大、東京オリンピック・パラリンピックの開催を考えると、低いワクチン接種完了率は日本にとって大きなリスクとなります。

「検査・追跡・隔離」は感染者数が少ない段階では有効ですが、いったん感染爆発してしまうとシステムそのものが機能しなくなります。デルタ株が猛威を振るう日本においては、もはや全ての感染者を追跡し、隔離することなど不可能です。とにかくワクチン接種を進め、新たな変異株がまん延する前に、できるだけ早く高い接種完了率を達成することです。

佐藤 日本はこれまで他の国のような厳しいロックダウンを実施していません。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を発出し、政府が国民に行動自粛をお願いする形で感染を抑制してきましたが、もはや「お願い」では不十分だという指摘も出ています。

次ページ以降では、コロナ後の日本経済を左右する重要課題、日本企業に求められることについて解説します。