減った「振り飛車党」。AIで将棋の戦法が変わった?

 前編でも少し触れたが、AIは将棋界に大きな変化をさまざまな面でもたらした。

 将棋では、序盤の基本戦法は「居飛車」と「振り飛車」の大きく2つに分けられる。居飛車は自陣の右から2列目に配置されている飛車の前の歩を進めて戦う。振り飛車は飛車を自陣左に移動して(=振って)戦う。振る位置により「三間飛車」「四間飛車」「中飛車」「向(むかい)飛車」がある。昔は巨頭・大山康晴十五世名人を筆頭に、升田幸三実力制第四代名人など振り飛車の使い手も多かった(いずれも故人)。

 谷川の近著『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社+α新書)によると、AIは振り飛車を評価しないという。「棋士が飛車を振ったら、次の推奨一手で元の位置に戻させた」とか。

 確かに最近、振り飛車が減った。現在、トップ棋士のほとんどが「居飛車党」で、「振り飛車党」は久保利明九段(45)、菅井竜也八段(29)などわずかしかいない。これは、AIの影響なのだろうか。それを伺うと「AIがなぜ振り飛車を評価しないのかは、よく分かりません。それでも若手で振り飛車を好む棋士はいます。少数派ですが、野球ならサウスポーのピッチャーのようなものでしょうか。評価値は高くなくても自分らしさを出せるのでしょう」と谷川は語った。ちなみに将棋を野球に例えることも多い谷川は大の「虎ファン」である。

 最近はAIの影響か、居玉のままで戦端が開かれる将棋が多い。これについて「がっちりと玉を囲ってから戦いを始めるのも、今のように囲わずに戦うのも将棋です。AIの登場で、いろんな戦い方が要求されるようになりました。序盤の一手一手の精度や必然性が人間の研究でも大事になっており、王を囲わないまま、戦いが始まることも増えました」と話す。