リモート・マネジメントによって、
管理職の「格差」が明らかになる
逆に、「信頼関係」を築くことができれば、一気に状況は変わります。
特に、リモート環境下では、その効力を強く実感できるはずです。
なぜなら、「この人なら、何でも相談できる」「この人は、自分の力になってくれる」という信頼感をもてる管理職に対しては、メンバーのほうから積極的にホウレンソウしてくれるようになるからです。
つまり、管理職がわざわざ「監視」などしなくても、メンバーのほうから自動的に「仕事ぶり」や「置かれている状況」「困りごと」などを知らせてくれるのです。だから、「リモハラ」など起こりようがありません。
リモート環境下では、管理職は“目隠し”された状態でマネジメントをすることを強いられますが、信頼関係という「インフラ」があれば、メンバーがその“目隠し”を取り払ってくれると言ってもいいでしょう。
むしろ、こう考えるべきかもしれません。
管理職とメンバーが同じ場所で仕事をするリアル・マネジメントにおいては、信頼関係という「インフラ」が脆弱であったとしても、その問題はそれほど先鋭化しなかったのだ、と。
なぜなら、管理職はメンバーの仕事ぶりを目視することができるので、それぞれが「置かれている状況」を把握しやすいからです。そこに「信頼関係」があろうがなかろうが、メンバーの「仕事ぶり」を把握することが可能な環境に恵まれていたと言ってもいいかもしれません。
ところが、リモート・マネジメントでは、その環境が失われてしまいます。
その結果、「信頼関係」を構築できていた管理職と、そうではない管理職の“格差”が白日のもとに晒されます。リアル・マネジメントでは覆い隠されていた問題が、リモート・マネジメントで露見してしまうのです。
そして、リモート・マネジメントは、「信頼関係」という「インフラ」なしには成立させるのは不可能。その意味で、リモート・マネジメントは、管理職の力量を測る「試金石」だと言うこともできるのです。
「管理職」がすべてに優先すべき仕事とは?
もちろん、「信頼関係」を築くのは決して簡単なことではありません。
それぞれ異なる「人格」「性格」「能力」「経歴」をもつメンバー一人ひとりと、信頼関係を構築するのは、非常に骨の折れることです。
しかも、メンバーとの相性もありますから、関係性を築くのに苦労する相手も必ずいるものです。私自身、特定のメンバーの「不信」を買ってしまったこともあると思います。管理職としてさんざん悩んできたというのが正直なところです。
だけど、この仕事から決しては逃げてはなりません。
むしろ、信頼関係という「インフラ」がなければ、マネジメントそのものが成立しないのですから、すべてに優先して取り組むべき仕事だと考えるべきです。
「短期的な目標」「目先の売上」よりも、メンバーとの「信頼関係」を優先すべきと言ってもいいでしょう。「目標未達」「売上未達」は、今後の取組み次第で取り返しのつく問題ですが、「信頼関係」は一度傷つくと修復は極めて困難。逆に、「信頼関係」を構築できれば、結果は自然とついてきます。だから、「信頼関係」をすべてに優先させようと腹をくくったほうがいいと思うのです。
そして、その信頼関係をさらに強固なものに育てていくことができれば、メンバーは「この人と一緒に仕事がしたい」「この人のために頑張ろう」と思ってくれるようにもなります。
ここまで来ることができれば、高いモチベーションをもつメンバーが、管理職を中心に良好なチームワークを発揮して、最高度の機能を発揮してくれるようになります。これこそが、管理職にとって「最強の武器」となるのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。