自民党総裁選は、影響力を保持したい長老と、世代交代を狙う若手・中堅との世代間闘争でもある自民党総裁選は、影響力を保持したい長老と、世代交代を狙う若手・中堅との世代間闘争でもある Photo:JIJI、朝日新聞社提供

 無派閥議員として頂点を極めた首相の菅義偉(72)は、権力を巡る攻防の果てに突然表舞台から姿を消した。そして菅退陣劇の中で新たに生まれた確執がまた次の権力闘争の舞台の幕を上げた。

 菅は8月29日の日曜日、154日ぶりに休みを取り、東京・赤坂の議員宿舎で終日過ごしていた。しかし、菅を取り巻く状況は風雲急を告げていた。

 直前の8月26日には9月29日投開票の自民党総裁選の日程が確定し、これを受けて自民党前政調会長の岸田文雄(64)が出馬表明を行った。事実上の「菅おろし」が表面化した。菅は周辺に「何で岸田が出るんだ」と怒りをぶちまけている。ただしこの日、菅と接触した自民党幹部は菅から強気の思いを聞かされている。

「『日経新聞』の世論調査で自民党支持層を見ると俺が1番だ」

 調査全体を見れば、支持率の順はワクチン担当相の河野太郎(58)、元幹事長の石破茂(64)、岸田に次いで4位にすぎなかったが、菅は本格的な党員投票が行われる今回の総裁選に手応えを感じていたようだ。もちろん前首相の安倍晋三(66)と副総理兼財務相の麻生太郎(80)の支持が大前提だった。