RSウイルスは、赤ちゃんを中心に風邪の原因となり、せきや鼻水など呼吸器症状を引き起こす。2~3割は気管支炎や肺炎に陥り、まれに急性脳炎を引き起こすため、楽観は禁物だ。

 例年は、秋から流行が始まり、年末頃にピークを迎えて春まで続く。しかし国立感染症研究所によれば、今年は6月には全都道府県で患者が報告された。さらに、7月までに2018・2019年の年間累積患者数を上回ってしまった。

 しかもコロナ前と違い、2歳以上の患者数とその全年齢に占める割合が高くなっているという。この点は見逃せない。

 通常は生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルス感染を経験する。再感染もあるが、その場合は受診の必要がないくらい軽いことも多い。

 今年の2歳以上の受診増は、昨年流行がなく未感染の乳児が多かったせいに違いない。その子たちが今年になって初感染しているのだろう。

 実はRSウイルスのこの夏の復活流行は、日本に限ったことではない。

 世界の複数の地域で、昨年はRSウイルスの流行が消失した。ところが日本と同じ北半球の米国や英国、フランスなどで、今年になって感染が増加している。南米でも同様に、激減から一転、今年は感染が増加し、高いレベルで推移している(国立感染症研究所)。

インフルは例年以上の勢いに?
米CDCが指摘する5つの要因

 こうした呼吸器系ウイルスの動向を、米国CDC(疾病予防管理センター)のインフルエンザ監視チームも注目している。

 チームリーダーのリネット・ブラマー氏は今年7月、同国のニュース専門チャンネルCNBCで、RSウイルスの活動がすでに新型コロナ前に戻っていると指摘。CDCは、「インフルエンザウイルスの流行サイクルが、パンデミック前のレベルに戻るのに備えている」とした。

 さらに「次のインフルエンザシーズンは、通常よりも厳しいものになる可能性がある」と明言し、5つの理由を挙げている。

(1)新型コロナ感染予防のための社会生活・経済活動の制限が、緩和され続けている。

(2)インフルエンザに対する抗体は、時間の経過とともに減弱する。

(3)ワクチン接種による免疫は、自然に感染して得られる免疫よりも早く衰える。

(4)昨季に流行がなかったため、成人(特に昨年ワクチン未接種の人)の免疫力は、2季以上前のインフルエンザウイルスとの接触に依存する。

(5)幼い子どもたちも未感染や未接種が多く、インフルエンザに対する免疫力が低いとみられる。保育園・幼稚園、学校で感染が広がる可能性がある。

 その上でCDCは、「ワクチン接種は、ご存じの通り、インフルエンザとその深刻な合併症から皆さん自身と愛する人を守るための、ベストな方法に変わりありません」と呼びかけている。

 これには異存はないだろう。インフルエンザワクチンの接種はこの秋も必須だ。