特に今インフルにかかると、平時以上に厄介な思いをすることになる。

 まず、発熱やせきなどの症状のある人を受け入れている医療機関を探さなければならない。見つけても、いきなりは受診できないことの方が多い。受診したら、インフルと新型コロナ両方の検査を受け、結果を待たねばならない。

 その間、ずっと「新型コロナでは」と本人も周囲もハラハラし続けることになる。

 要するに、体力的にはもちろん精神的にもキツイ。そんな目に遭うくらいなら、ワクチンを打っておく方がずっと賢明というものだ。

インフルワクチン供給の遅れ
コロナと同時接種で影響小さく

 気になるのは、インフルエンザワクチンの供給見通しだ。

 厚労省(9月1日発表)によれば、今季の供給量は最大約5580万人分で例年並みと発表している。ただ昨年は、1996年にデータを取り始めてから最多の供給量で、それでも足りなかった。昨年に比べると、今年は供給量としては2割減となり、新型コロナワクチン生産によって世界的に製造資材を入手しにくく、供給ペースが遅れるという。

 ナビタスクリニックでも通常なら10月の接種シーズン直前に、いったんまとまった数量が納品される。だが今季、当初の供給量は昨季の6割程度になる見込みといわれる。その後は12月上旬まで順次供給となる模様で、予約受付も入荷次第適宜となるだろう。

 ワクチン接種後すぐに十分な免疫が得られるわけではない。ぜひ本格的な流行時期よりも2週間以上前、11月前半までには打っておきたいところだが……。

「そもそも自分は新型コロナワクチンもまだ完了していない。10月以降になりそう」という人もいるだろう。その場合、インフルワクチンとの「同時接種」をおすすめしたい。

 1度の受診で複数のワクチン注射を行う同時接種は、日本人にはまだあまりなじみがないかもしれない。新型コロナワクチンに関しても、2月に薬事承認された当時の「同時接種は行わず、接種間隔は13日以上の間隔をおく」という方針のまま、放置されている(第18回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会)。

 だが、2週間も空けなければならないとなると、供給がスムーズでないインフルワクチンの接種機会や最適なタイミングを逃しかねない。そこで同時接種を、というわけだ。

 海外では、同時接種そのものは以前から普通に行われてきた。新型コロナワクチンに関しても、当初こそ様子見だったが、安全性や有効性への影響については問題ないとみられていた。

 そして今年5月、米国CDCは「新型コロナワクチンと他のワクチンは、タイミングを問わず接種してよい」と、同時接種を解禁。7月には英国NHS(国民保険サービス)も基本的に同じ方針を示している。

 私も日々、診療の中で、さまざまなワクチンの組み合わせの同時接種を行っている。新型コロナワクチンとインフルワクチンについても、科学的に合理性があれば同時接種を行うつもりでいる。