アフターコロナの
住みたい街の選び方とは

 先日、日本経済新聞がテレワークに適した環境が整う自治体のランキングを公表した。住宅面積や通信環境などを数値化した結果で、1位は滋賀県彦根市、2位は山形県酒田市、3位は山梨県甲府市と島根県松江市となった。

 だが、例えば会社に全く出社しなくても業務対応が可能なエンジニアはともかく、交渉や企画立案の部門、製造部門、人事・総務・財務などは大抵の場合、定期的に出社する必要が生じるため、例えば首都圏で人事部門に勤務する正社員が実際に酒田市に居住しつつ業務を従前と同じく実施していくのは相当ハードルが高いことが想定される。

 つまり、テレワークやオンライン授業が定着したからといって、年間を通じて1度も会社や学校に出向く必要がないということは考えにくいから、仮にコロナをきっかけに転居するのであれば、いざというときに移動の大きな負荷を伴わずに出社・通学が可能である準近郊・郊外エリアに住むというのが現実的な対応ではないか。

 このように、都市圏居住者および地方圏の市街地中心部居住者を前提に、コロナ禍でもこれまでの生活スタイルや生活水準を可能な限り維持しながら、より安心して生活できそうなエリアを新たに選ぶための条件は何かを考えると、まずは「地域の安全性」が検討項目のトップに挙げられる。

 国内のみならず世界的に見ても、人口密度の高さとコロナ感染者の多さは密接に相関しており、人口密集地から物理的に距離を置くことが感染予防の大前提となるからだ。

 したがって都市圏では準近郊・郊外といった中心地から離れたエリア、地方圏においても市街地中心部からやや離れたエリアを選択するべきだろう。

 この「安全性」は専ら疫学的なリスクを低下させることをイメージしているが、他方で防災や防犯でも「安全性」は優先されるべきだから、新たに選ぶ居住エリアについてはハザードマップや犯罪発生マップなどを参考に“より多面的な安全性”を確保することを検討する必要がある。

 そしてこれまで居住していたエリアから会社や学校までの距離が遠くなることが想定されるから、なるべく移動の負担が少ないエリアに住むことも必要だ。