データを軸にした行動こそ、
ビジネスで大いに役立つ

鈴木氏:母から学んだ(コンディションをアップさせるための)「ものさし」の大切さと、サッカーで学んだ(パフォーマンスをアップさせるための)「ものさし」の大切さを融合してこそ、確実かつ計画的に勝利へと歩むことができることを運よく経験できた私は、いまのそれをビジネスという現場で活用し、それも大いに役立っていることが実感できています。

 ビジネスにおいては、スポーツにおける「連携」とも言えるコミュニケーションにはそこでキーマンとなる人物のコンディション自体が大切となります。いかに体調よく臨むかでアイデアも行動もベストになるはずです。クライアントの要望を可視化してスカウティングを重ね、その要望の応えを導き出します。そして、その解答を気持ちよく提案する。そのフローは、いたってスポーツの世界と同じだと思うんです。

かつてのペトロヴィッチ監督からも、
多くのことを学ばせてもらいました

鈴木氏:現在、コンサドーレ札幌の監督を務めているペトロヴィッチ監督が、2012年から2017年まで浦和レッズの監督をしていたのですが、そこで彼が言ったセリフが今も忘れられません。

2014年のシーズン、埼玉スタジアムでの試合中に会話を交わす浦和レッドダイヤモンズの当時監督ミハイロ・ペトロヴィッチ氏と鈴木啓太氏2014年のシーズン、埼玉スタジアムでの試合中に会話を交わす浦和レッドダイヤモンズの当時監督ミハイロ・ペトロヴィッチ MASASHI HARA / GETTY IMAGES

責任は全て俺にある」…と。「責任」という単語は、監督のコメントにはよく登場する言葉で、当初は別に気に掛けず「好きな言葉なんだなぁ」といった感じで流していました。でも監督は、「その代わり、君たちにだって責任があるんだ」と言い出したときがあったんです。そして続けて…、「毎朝起きたときに、『練習場へ行きたい、サッカーがしたい』と思う気持ちを持つ責任がある」と言うんです。「そういう気持ちを持った選手じゃないと、指導したってうまくならないだろう」ってね。

試合の責任は俺にあって、荷物をまとめて一番に出ていくのは俺だから、そこは信頼して欲しい。その代わり君たちは、『サッカーをしたい、上手くなりたい』と思う気持ちは私が変えることはできないから、それを君たち自身が思えるようにすることが君たちの責任なんだ」って言うんですよ。そこで腑に落ちたんです…。

 そして現在の僕は、それを実践しようと努めています。自分自身で会社を運営しているわけなので、責任は僕にあります。それぞれ働いてくれている人たちに、責任をとらせるわけにはいきません。だけど、「毎朝仕事したい」と思ってくれるような組織なら、絶対に良くなりますよね。じゃあそのために、自分はどんなタスクを与えるべきか? どう指導したら彼らのモチベーションがアップするのか?…も考えながら、毎日仕事に励んでいます。

 監督になったからには、選手たちがプレーすることが楽しくなる工夫を行うべきだってことを、ペトロヴィッチ監督から学びましたね。 監督はミスに対しては怒りませんが、チャレンジしないことに対しては怒るんです。ここは、とても一貫していました。そこには「忍耐が必要」であることを、この立場になって実感している自分がいますが…。