消費者の感じる「価値」は
「機能価値」から「参画価値・共犯価値」へ変化

高宮 三つ目は、「コンシューマー側の感じる価値が変わってきている」ことだと思っています。

 例えば、昭和の家電は、「機能価値」を主軸に置いて、「ハードな製品ベース」で価値を普及していました。それを企業側が、プッシュでユーザーに価値を感じてもらって、対価をもらうという形でした。けれども、2000年頃から、消費者に選ばれるために大切なのは「体験価値」や「エクスペリエンス」だと言われるようになりました。

尾原 「エクスペリエンス・マーケティング」と言われていますね。

高宮 「モノ消費」ではなくて、「コト消費」と言われていたのもその文脈ですよね。

 ECでも、例えば「アソビュー (asoview)」では「ラフティング」のようなレジャー体験を購入することができます。ユーザーは「コト消費」にどんどん進んだと思います。

 さらに、その一歩先として「体験価値」から「参加価値」になってきました。

尾原 そうですね。

高宮 例えば、アイドルと一緒に「小劇場でライブを体験する」こともそうですよね。これがさらに発展すると、「自分の推し」を応援し、「自分が推したこと」によってアイドルがメジャーになっていくことに価値を感じるようになります。そういうファンは、場合によっては、「自分の推し」がメジャーになると、「次の推し」を探して育てるという行動をすることがあります。

尾原 確かに。自分なら別の推しを探すと思います。

高宮 「推しが提供するクリエイティブ」に対して、何か価値を感じるのはもちろんですが、どちらかというと、「自分が参加して育てる」という「推している行為そのもの」に価値を感じるのだと思います。

尾原 まさに「体験価値」から「参加価値」ですね。さらにいうと、「参加価値」から「参画価値」や「共犯価値」ですね。

高宮 「クラウドファンディング」もそうだと思っています。本当にイノベーティブな最新のガジェットを早く買えるECではなくて、わざわざクラウドファンディングで商品を購入するのにはワケがあります。

「本当にできるの?」というイノベーティブなものを「できなくてもいいからそれを一緒に実現したい」とか、「一緒に自分も実現してクレジットされたい」というように、自分があったらいいなと思うからこそ、自分も「モノづくりのプロセスの一部」になりたいと感じるのだと思います。

尾原 3つの変化をまとめますね。

 初めに、「ビジネスをするコスト」や「サービスを提供するコスト」が圧倒的に安くなることで、「マイクロエコノミー」が実現したことが一つ目ですね。

 次に、「動画配信」だけではなく、「ライブ配信」でつながることができ、「過程を共有することができる」ということが二つ目ですね。

 最後に、消費者の感じる価値の変化。「機能価値」から「体験価値」に、受動的な「体験価値」から、能動的な「参加価値」へと移り変わりました。そして、今や、単に参加するだけではなく一緒に何かを作っていくという「参画価値」や「共犯価値」へ変わってきました。このような「ユーザーの感じる価値の変化」があるというのが三つ目ですね。

>>(2)に続く