マーケットフォーカスPhoto:PIXTA

世界で一人負けだった日本株が、菅首相の退陣表明を契機に急反発した。この展開を、菅首相の属人的問題、日本のファンダメンタルズの表れとみてしまっては、相場を捉えるポイントを外すことになろう。相場動意のメカニズムを踏まえて、日本株の上昇が2022年へ向けて続く条件を考える、最も重要な条件は日本自体より、グローバルなマクロ経済環境にある。(田中泰輔リサーチ代表 楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー 田中泰輔)

一人負けの日本株の急反発
きっかけは菅首相の退陣表明

 一人負けに近かった日本株が急反発した。TOPIX(東証株価指数)は1990年以来の高水準を回復、日経平均株価は2月に付けた3万円台へ到達し、失地を取り戻した。

 日本株相場の加速のきっかけは、9月3日の菅義偉首相の退陣表明だった。筆者は、菅政権存続でも、新政権誕生でも、日本のマクロ経済環境に大きな変化を見込んでいない。それなのに株価が急反発する背景には、ファンダメンタルズとは別の力学が働いている。これを踏まえた上で、日本株上昇が持続可能になる条件を考えよう。

 まず、誰が首相でも特に変わるまいとしたマクロ経済事情から確認しよう。

 第一に、日本株低迷の主因とされがちだった新型コロナ・デルタ株感染の蔓延(まんえん)、日本のワクチン接種の遅れは、今後3カ月に大幅に改善されるだろう。筆者は感染症の専門家ではない。しかし、コロナ感染者数の基本推計式から想定される波動を見ると、東京からピークアウトが進むと見込まれる。

 コロナとワクチン・治療薬の攻防は今後も長く繰り返されよう。それでも、ワクチン接種を条件に、人流と経済活動を正常化させようという政治判断が、まず欧米で進み、日本も追随する公算だ。

 第二に、菅政権であれ新政権であれ、大規模経済対策は打つだろう。

 第三に、FRB(米連邦準備制度理事会)による年内テーパリング(量的緩和縮小)開始が相場にほぼ織り込み済みとなり、米株式ショックが日本株相場に降りかかるリスクもまた軽減されるであろうことを付言したい。