原油相場は7月上旬に高値を付けた後、8月下旬にかけて約2割下落した。経済正常化に伴う需要増加期待、デルタ株による新型コロナウイルス感染拡大など強弱の材料が入り混じり、不透明感が強い相場が続いている。ただ、長めの時間軸で見れば世界需要持ち直しで上昇していくと予想される。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
OPECプラス決裂で
乱高下した原油相場
足元の原油相場は高値から下落した後、もみ合っている。米国産原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は7月6日に76.98ドルと2014年11月以来の高値を付けた後、8月23日には1バレル当たり61.74ドルと19.8%下落した。欧州北海産のブレントは7月6日に77.84ドルと2018年10月以来の高値を付けた後、8月23日には64.60ドルと17.0%下落した。その後、原油相場はやや持ち直している。
7月初めには、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」の原油生産方針を巡る協議で、サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)の対立が先鋭化して決裂してしまった。
その結果、既定路線とみられていた増産の決定ができず、締まった需給状態が続くとの見方から、7月6日には、上記の通り、WTI、ブレントともにいったんは高値を付けた。しかし一方で、協調減産体制にひびが入り、増産を始める産油国が出てくる可能性も意識され、この日は、結局、前日より値を下げた。