黒塗りの文書が15万6760円
何でもかんでも「パフォーマンス」と、ねたむ声

 ツイッター上で拡散される虚偽の内容は、真相解明を阻止したい、あるいは入管の姿勢を擁護したいように見えるものが多い。

 人が亡くなった事実があるのに、なぜ亡くなったか詳細がわかっていない。だからこそ真相解明を求めているのに、支援者らの活動をパフォーマンスだと言い立てる人もいる。

 たとえば日本人が国内のある機関に収容されているときに亡くなってその理由がわからない、という場合に同じことが言われるだろうか。外国人嫌悪あるいは、外国の人たちが日本国内で直面する問題への無関心から来る無知を感じざるを得ない。

 8月17日、指宿弁護士らは、約1万5000枚の黒塗り文書の前で記者会見を行った。名古屋入管に対して行政文書の開示を求めたところ、3カ月後に送られてきたのが大量の黒塗り文書だったが、支払った手数料は15万6760円。

 名古屋入管は黒塗りの理由を「個人の権利利益を害するおそれがある」「当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」などと説明した、と報道されている。真っ黒に塗り潰された文書の前での会見が報道されると、さすがに非難の声があふれた。

 しかし、これさえも一部では、支援者らがわざと大量の文書開示を行って黒塗り文書を出させ、記者の前でパフォーマンスを行ったかのような内容のツイートが拡散され、うのみにしている人もいる。

 これは、支援者らがウィシュマさんの死に関する情報開示を求めたところ、入管側から情報開示手続きを提示され、それに従って開示請求を行っただけにすぎない。正しい手続きのどこが「パフォーマンス」なのか。

 支援者らに疑念を持つ根底には、ゼノフォビアの他に「日本の行政機関がそんなおかしなことをするわけがない」といった過信もあるのではないかと感じる。

 壁は厚く高いものの、会見の中で指宿弁護士は希望も語った。今年の5月には支援者らが「改悪案」と呼んだ入管法改正案が廃案となった。

 また、オンライン署名「#JusticeForWishma 名古屋入管死亡事件の真相究明のためのビデオ開示、再発防止徹底を求めます」は、現在までに7万5000筆以上が集まっている。この署名を始めたのは「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」。若い世代が疑問を持って声を上げたようだ。

 入管で収容者が亡くなり、その実態が解明されない問題は、ウィシュマさん以前から指摘されてきた。報道や関心の高まりを消してはならない。