◇引き出しから最適な言葉を選ぶ

 言葉選びは「洋服のボタン選び」に似ている。無数にあるボタンの中から、どんなボタンを合わせるかによって服の印象が変わるのと同じだ。

「左右を留める」というボタンとしての役割を果たした上で、着る人が喜んでくれるボタンを選ぶ。言葉もボタン選びのように、たくさんの言葉を引き出しに集めておいて、その人にフィットするものを見繕い、最後に一つに絞る。

「言葉の選び方の良し悪し」は、次の3つのステップで確認することができる。言葉選びに手間をかけられたか→選んだ結果に満足できたか→その言葉は相手に伝わる力を持ったか。

 先ほどの「洋服のボタン」を例に使うと次のようになる。いろんなボタンを試してみたか→納得のいくボタンだったか→そのボタンは相手が喜んでくれたか。

 3つの中で最も難しいのは、最初の「言葉選びの手間」である。例えば、後輩のパフォーマンスが「いまいち」だった場合にどう伝えるか。そんな時、著者は前向きに言い換えられる言葉をたくさん考えるという。「あと少しで合格」「もっとやれる人だよな」「気持ちは十分見えた」「いい時と比べると、惜しい」「納得したくないだろ」「今日が大舞台じゃなくてよかった」などである。

 このように手間をかけて表現に磨きをかけていく「言葉のわらしべ長者」を行う。この手間暇こそが、相手に伝わるエネルギーを生むのだ。

◇徹底的に書いて自分自身を知る

 若い人の悩みの大半は「人生のエンジンがかからない状態」によるものだろう。将来何になればいいかわからない、仕事にやりがいが見つからない、会社で何をすべきかわからない……。そんな時に著者が勧めるのは「書くこと」である。

 著者も大学生の頃、自分がどんな仕事をしたいのかわからなかったという。そこで行ったのは、徹底的に書くことだ。自分の好きなこと・嫌だと思うことを書けるだけ書き出してみる。初めのうちはいくつも頭に浮かんでくるが、徐々に苦しくなってくる。それでも3日間書き続け、大学ノート3ページ分の「好きなこと・嫌いなことリスト」が出来上がった。

 その次は、似た項目を集めて「言葉の吸収合併」をした。「誰かのために働くこと」「ありがとうと言われること」「人の役に立つこと」は、言葉が違っても芯は同じである。これを一つに集約し、煮詰めていく。