日本に限らず世界的な問題として、経済的「格差の拡大」がある。格差対策では、超富裕層に対して多くの社会的な費用負担を求める「上の方の格差対策」も重要だが、何といっても現実に生活を圧迫されている低所得層に向けた「下の方の格差対策」の緊急性・重要性が大きい。

 基礎年金の全額税負担は、支給のための事務負担(昨年問題になった日本の行政の苦手分野だ)もない。予算を組み替えて、国債を発行すれば直ちに実行できる。

(2)消費の下支え

 昨年の一時金支給では、一律に支給された10万円の多くが消費に回らず貯蓄に回って、「景気対策」として有効でなかったように見えたことが、一部で批判の対象になった。

 しかし、そもそも所得が伸びない中で、不確実な新型コロナウイルスの不安が加わったというのが当時の状況だった。給付を受けた国民の多くが、いわば「10万円で一番買いたかったものは、安心のための貯金だった」というのが、その背景だろう。

 保障年金構想が実現すれば、これまで徴収されていた毎月1万6610円が継続的に手元に残るのだから、国民はより安心してお金を使うことができる。

 サラリーマンなら、毎月差し引かれる社会保険料が減って、1万6610円手取りが増えるのだ。

 心が明るくなる話だと思う。

(3)より確実なセーフティーネット

 保障年金制度の下では、現役時代の経済的な困窮などによって年金保険料を納めることができなかった人でも将来、一定額の年金を受け取ることが期待できる。

 もちろん、今でも日本の年金はそれなりに安定したセーフティーネットの機能を果たしているが、これが一層強化される。