解決法は「自己開示し合える関係の相手を持つ」こと

榎本博明『承認欲求に振り回される人たち』(クロスメディア・パブリッシング)榎本博明『承認欲求に振り回される人たち』(クロスメディア・パブリッシング)

 なぜ、そこまで無理をして良い人を演じてしまうのか。それは、人から認められたいという思いが強すぎるからだ。

 では、なぜ人から認められたいという思いが強すぎるのか。それは、承認欲求が満たされていないからである。満たされない欲求が人を駆り立てるのであって、満たされた欲求は人を動かす力を持たない。

 自分に元々予定があるなら、誘いを断ったって、相手も納得するだろうし、気分を害することもないだろう。疲れて体調が悪いなら、正直に話して誘いを断っても、相手に嫌われたりしないはずだ。また体調が戻ったときに、先日は悪かったと言って、こちらから誘ったっていいだろう。

 それは当然のことなのだが、承認欲求が強すぎると、そうした冷静な判断ができなくなる。そして無理をして“良い人”を演じることになってしまうのだ。

「自分の生きづらさの理由が分かった」と気付き、「もう承認欲求に振り回されるのをやめよう」といって態度を変えたはいいが、かえって失敗することもある。「良い人を演じるのをやめることにした」といって、いきなり自分勝手に振る舞うようになってしまうのだ。極端から極端に振れてしまう。それでは、周囲とうまくいかなくなり、また別の形でストレスをため込むことになる。

 承認欲求に振り回されないためには、適度に人に気を使いながらも、率直に自己開示し合える相手を持つことだ。自分を率直に出しても大丈夫な関係があれば、承認欲求は満たされ、過度に良い人を演じる必要がなくなるのである。