1.その人の社会的な立場
ア その領域の権威と自他ともに認めている人
イ 今まさに旬な人
ウ それなりの実績があるが、旬は過ぎている「過去」の人
エ まだ頭角を現したばかりだが、将来有望で化けそうな人
2.価格(ギャランティー)
高い
中程度
安い
1と2の掛け合わせでいうと、下記の表のようになるだろう。
・アの場合、まずだいたいギャラは高い。
・イは売れっ子の場合はアより高い価格帯で、中くらいまで。
・ウは人によって異なる。昔の威光を利かせてまだ高いままの人もいれば、ギャランティーを下げて、仕事をたくさんとろうとする人もいる。
・エは、基本的には安い。
どのくらい出現するかの分布で言うと、上記の図のようになるだろう(濃い部分に頻出し、薄い部分にも出現する)。この分布から、コストパフォーマンスを考えてみる。
ア その道の権威
その道の権威であるから、その名に恥ずかしくないアウトプットを出すことは保証されている。しかし下手をすると、その人の既定路線、基本的な型を踏襲しただけの「いつもの」ものにまとまってしまうだけかもしれない。それをありがたがる人にとっては、もちろんその「いつもの」ものでよいのだろう。実際は、その人の仕事は、工房のように組織化されていて、お弟子さんたちがその人の型を忠実に守って、せっせと製作しているだけかもしれない。
イ 今が旬の人
「仕事は一番忙しい人に頼め!」というナポレオンの言葉があるように、時代に乗っている人は、よい情報や、よい人脈、時代精神にあった思考を持っている。だからこそ、この人にかけてみる価値はあるかもしれない。ただし、猫もしゃくしもその人に仕事を頼んでいて、仕事が集中しすぎていれば、相手の一つ一つの仕事に対するコミットメントレベルは当然下がる。
結局、一番忙しい人にはそれなりの高額なギャランティーを払うか、当人にとって特別な意味のある仕事をお願いするなど、高いモチベーションが湧く状況を用意しなければ、やっつけ仕事をされる可能性は大きい。その意味では、ほとんどの場合、コストパフォーマンスは発注元がお金を出せるかどうかで決まってしまう。
ウ それなりだが、過去の人
そもそも、その人の名前を聞いた時点で、聞き手も過去の人だなと思ってしまうであろうし、時代精神には合わず、人びとからの称賛は得られない可能性が高い。しかも旬だったときのギャランティーのまま、価格を下げないで頑張っている人だと、プライドも高く、いろいろと要求も多く、面倒なことになるかもしれない。
その意味では、面倒でお金もかかるうえに、時代遅れで、最悪のコストパフォーマンスになる可能性がある。ギャランティーを下げている人は、過去に売れていても、案外プライドが高くてやりにくいということがなく、ものわかりもよく、こちらの言ったとおりにやってくれる可能性が高い。こちらのやりたいことが明確であれば、要求に見合ったアウトプットを出し、コストパフォーマンスも案外よいかもしれない。
エ 将来有望な人
当たれば最高だが、まだアウトプットそのものの質が安定していなかったり、全然使い物にならなかったりして大失敗もありうる。発注する側に確かな眼力が必要になる。もちろん眼力があれば、安く、印象的な仕事をしてくれたうえに、その後売れっ子になれば、(恩知らずな人も中にはいるかもしれないが)最初に引き立ててくれたということで、恩に着てくれるだろうし、○○氏、あるいは○○社がまだ無名だった時代に大抜擢した目利きの会社という美談になるかもしれず、これほどすばらしいことはない。
とまあ、こんな感じである。期待値と、そもそも自社に予算がどれくらいあるか(予算制約)は意思決定における重要なポイントである。