現在、培養肉のスタートアップ企業は世界に60社以上ある。日本でも独自のスタンスで研究に取り組むインテグリカルチャーというスタートアップ企業や、大手食品メーカーの日清食品などが培養肉事業に進出している。近い将来、培養肉がごく普通に流通し、何の抵抗もなく庶民が買い求める時代が到来するかもしれないのだ。

 人工的な肉には、培養肉だけではなく、植物由来の代替肉もある。培養肉や代替肉が注目されている背景には、世界的な人口増加がある。2021年の世界人口は78億7500万人。今後も年を追うごとに増えていき、国連では2050年に97億人に達すると推計している。急増する世界の人々の命を支えるには、膨大な量の食料が必要とされる。

 こうしたなか、今後の人口増加に追いつかないと懸念されているのがたんぱく質源だ。単純な人口増加に加えて、新興国で食肉需要が急速に拡大していることも、今後の肉不足の要因になる。国が経済的に成長して人々が潤うと、食事に使える金が増えて肉を食べたくなるのは至極当然だ。

近い将来、「培養肉」がごく普通に流通している!?

 そこでクローズアップされるようになったのが、培養肉や代替肉だ。環境に対する負荷を抑えて、世界の人口爆発にも対応できる。

 しかも、生き物の命を奪わずに生産するので、近年増えつつあるヴィーガンやベジタリアンをターゲットにできる可能性もある。厳密に衛生管理された施設内で製造されることから、食中毒や感染症のリスクが極めて低くなるのもメリットだ。

 こうした人工肉の市場は、特に欧米で大きな注目を浴びている。ある試算によると、2020年における世界の培養肉と代替肉を合わせた市場は約2570億円余りだった。これが10年後の2030年には約1兆8700億円超と、7倍以上も世界市場が膨らむと予想されている。

 では現在、どういった培養肉が開発されているのか。これまでにない新たなたんぱく質源として、人々にどう提供されようとしているのか。国内企業の取り組みを紹介していこう。