苦手なことは、「隠す」のではなく協力を得る

 まず、「人の顔や名前を覚えるのは自分にとって難しいことだ」という認識をしっかり持てると、対策がとりやすくなります。

 何度か会えば覚えられるのか、複数回会っても難しいのか、考えてみてください。

 何度か会えば記憶できるのであれば、顔を覚えるまでは「以前にお会いしましたよね」といった話をして、相手に失礼にならないように気をつけながらやりとりをしていくというのもひとつの方法です。

 そのようなスタイルで大きな失敗をすることがなければ、対策としてはそれで十分でしょう。

 何度顔を合わせても相手の顔や名前を覚えられず、苦労しているという場合には、周りの人の協力を得たほうがいいかもしれません。

 自分は人の顔や名前を覚えるのが苦手だということを、周囲の人に伝えておきましょう。そして、来客の顔を見ても名前を思い出せないときには、同僚にこっそり「あの人、誰でしたっけ」と聞くようにします。

 難しいことには周囲の協力を得るほうが、未然にトラブルを防げます。

 私はそういうやり方で、仲間に助けてもらいながら働いています。

(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)

本田秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より、同子どものこころの発達医学教室教授。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。2019年、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)に出演し、話題に。著書に『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『最新図解 女性の発達障害サポートブック』(ナツメ社)などがある。