「投資家の思考と技術」を
経営に取り入れると、みなで豊かになれる
繰り返しですが、経営のOSを刷新しない限り、真のESGには近づけないのではないか、本当の意味での豊かさには近づけないのではないかと、私は考えています。経営者と従業員が二人三脚でやるというこれまでのやり方も素晴らしいのですが、そこに厳選投資家を加えて三位一体にしたほうが、よりよい経営ができるだろうと思い、三位一体の経営を提唱しています。
まずは冒頭で申し上げたとおり、経営者と従業員がしっかり自社の株式を持つ。日本人は、世界的に比べても自社の株をほとんど持っていません。会社のために汗を流して、企業価値が上がり、株価が上がったとしても、今の状況ではその恵みを享受できないのです。ですから、まずはみなで自社の株を持ちましょう。例えば、全体の10%程度の株を持ってもよいと思います。
そうして自社の株を持った従業員の方々は、もっと会社を良くしようと経営の参画意識を高め、知恵を経営に結集します。そこに投資家の思考と技術を組み合わせるのです。当然ながら、投資家は株価が上がらないと困りますので、どうすれば上がるかを日々考えています。「投資家の思考と技術」を組み合わせていくことによって、株式価値が上がり、それをみなで享受し、経済的に報われていく。冒頭(第2回参照)で見たような、みなで貧しくなっているという社会課題の解決を意図しているのが、私の提唱している「三位一体の経営」なのです。
これこそ、新しい日本的経営モデルになるのではと思っております。株主は、売買だけでなく、経営を良くするために働き、働いている人は株主になることで、株主資本主義かステークホルダー主義かという二項対立を軽やかに乗り越えていきましょう。