従業員が勤務先の株を
持つのはリスクではないのか?

毎年2~4兆円分の株を従業員に持たせるGAFAから学べること清水大吾(しみず・だいご)
ゴールドマン・サックス証券株式会社 株式営業本部業務推進部長 SDGs/ESG担当
2001年、京都大学大学院修了後、日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)入社。2007年ゴールドマン・サックス証券入社。2016年から現職。

清水大吾(以下、清水) 視聴者からいただいたコメントの中で、給料を会社からもらい、かつその会社の株を持つとなると、家計のリスクがその企業に集中し過ぎではないかという意見がありました。これに関していかがでしょうか。

楠木 なんらかの事情から、会社に買えと言われたら集中リスクがあると言えますが、会社がくれる分にはいいわけですよね。給料にプラスアルファで株をくれるのであれば、別に問題ないと思います。

清水 我々の場合、給料の何%かが強制的に譲渡制限付きの株で支払われるという形です。もちろん、絶対的な金額としてどうかという議論はありますが、毎年の給与として強制的に株を配ってしまうと、働いている間はずっと株価のリスクを負い続ける事になりますので、常に株価を気にして投資家の視点を忘れないようにするという仕組みです。

 例えば、最初は気前よく全社員に対して配ってしまうというのも良いかもしれませんし、定期的に積み立てみたいな形で持ってもらえば、「積み立て投資ってこんなに威力があるんだ!」という気付きにも繋がるかもしれません。

楠木 確かに。

中神 要は、「1つのカゴ」論ですよね。給料も賞与も会社の株も全部その会社にベットしてしまって大丈夫かという話はよく出ますね。

 まず僕が言いたいことは、従業員の方は、すでに会社にコミットし、会社をよくするためにたくさん汗をかいているのですから、その努力が株で報われるようになるならそれはいいことではないですかということです。

 次に言いたいことは、1つのカゴは危ないから分散させようとなったときに、この生き馬の目を抜く株式市場で、あまり投資の経験のない人が分散投資で儲けるなんて本当にできるのですかということです。投資を生業としている我々でも大変苦労します。分散投資は、少なくとも15社には投資しないと形になりません。2、3社に分ける程度では分散投資にはならないんです。個人の方に、そんな手間をかけたことが本当にできますか。

 このように申し上げると、大概の人は違うと言う。であれば、今いる会社にコミットして、汗かいて、いい経営になるように一生懸命働き、その長期的な果実を自社株という形で得るほうが、よっぽど安心確実なのではないかと思います

楠木 もしくは、ついでにインデックス投信を買ってくださいということですね。自分で組まないで。