「クラウドファンディング」が
急速に広がった、本当の理由

入山 今、専門家の間で「GDPという尺度はもう使えないのではないか?」という議論が出てきています。

尾原 確かに。GDPは見た目上、お金がやり取りされているところの付加価値の総額ですよね。

 でも、ストリーミングの映画を見ている人には、それ以上に「安価でいいものを見せてくれてありがとう」という余剰が生まれている。だからGDP以上にハッピーになっているということですね。

入山 そうです。特に日本はこの30年間、まったく経済成長していません。だからGDPベースで見るとまったく伸びていない。でも、余剰概念で見ると意外と豊かなのではないかという議論もあるんです。

尾原 僕も本当にそう思います。コンビニのお惣菜があんなに安いのも、流通が良くなって大量にいいものを作れるようになったからだし。

 あれも供給曲線が寝てしまっているわけですよね。その部分の余剰が大きいと。

入山 はい、おっしゃる通りです。

尾原 居酒屋で2700円払って食べるものがまずいかと言うと、むしろおいしくなっているんですよね。

 余剰消費分が上がっているというのは、「安くコンテンツが楽しめる余剰消費」だけじゃなくて、居酒屋とかコンビニとか「製造流通業に関する余剰消費」も、めちゃくちゃ上がっているということですね。

入山 その通りだと思います。そこに加えて言うと、メルカリのようなサービスも重要ですね。ああいうものがすごく価値を出して我々の消費者余剰を上げている。

 これも僕の理解ですが、結果として若い方は「費用対効果」という感覚が確実に弱くなっています。余剰がある分、「これだけお金を投じたら、これだけのバリューやベネフィットがないとイヤだ」という感覚が弱いんですよ。

尾原 なるほど。僕、こういう本を書いておきながら目から鱗の話です。今の若い方は「これくらいの金額でこんなに恵まれているのが当たり前」という感覚の中で育ちますもんね。

入山 そうなんです。消費者余剰がたくさんあるから、費用対効果やバリューはどうでもいいんです。そうなると、何にお金を払うのか? 

尾原 何に対しての感度かと言うと、「共感」って話になるんですね。

入山 そうです。もう、共感しかないんです。応援なんです。