実際、神奈川県逗子市で2020年2月、市道に面するマンション敷地内の斜面が崩落し、歩いていた女子高校生が死亡する事故があった。女子高校生の遺族が、このマンションの区分所有者と管理会社、管理人に対し、安全対策を怠っていたとして、損害賠償を求めただけでなく、マンション管理会社の代表を業務上過失致死の疑いで、マンションの区分所有者を過失致死の疑いで神奈川県に刑事告訴している。

 また、マンションに限った話ではないが、外壁タイルなど部材の落下事故による被害者は、19年度10人(うち死亡1人)となっており(国土交通省『建築物事故の概要』)、定期的な安全性の検査は欠かせない。

 一方で、「大規模修繕」を行ったがゆえの事故も明らかにこれ以上に多い。東京都港区六本木で、16年10月、マンションの大規模修繕工事現場で足場の鉄パイプが落下し、歩行者の男性が死亡している。

 皮肉にも、不測の事故を防ぐための工事で不測の事故を発生させてしまったのだ。また、厚生労働省の『労働災害統計』によると、19年の鉄骨・鉄筋家屋の建築工事における「飛来・落下」の事故は232件であった。

 大規模修繕はマンションごとに「適時適切に」行う必要性がある。そう、必要性がなければ先送りすれば良いのである。積立金には限りがある。だからこそ、優先順位をつけて実施すれば良いのだ。