工芸から現代アートのマーケットへ行くと、価格が一桁変わる
細尾 工芸の話に戻しますと、若くてガンガン攻めにかかっている人達が出てきて、今はすごく面白くなってきていますね。
秋元 そうだね。だから人間国宝の先生方は、ある意味で焦り始めているというか。
細尾 ちょっと違う勢いというか。
秋元 トップを走っている先生方は感覚が優れているので、やっぱり相当フェーズが変わって来ているのを感じていると思う。昔は伝統工芸の先生方って守られていたので、僕なんかは彼らからすると、在野の民草みたいなもんで(笑)。でも、今はやっぱり無視しないですよ。「一緒に何かやるんだったら、やりましょう」みたいになってきた。この10年で相当変わってきているなと。
細尾 私も仕事上、人間国宝の方とも交流があるんですけど、最近、重鎮の方から褒めていただきました。「このあいだ新聞で見たけど、頑張っているな」と。けっこう見てくれているんですよね。
秋元 あと、工芸業界で驚かれたのが、現代アートのマーケットに乗った瞬間に販売価格が変わってしまうこと。たとえば工芸で、1点数百万円といったら相当高いよね。でも、それが現代アートに入ったら1000万円、2000万円なんてふつうにある。
細尾 ゼロの付き方が全然違いますよね。現代アートになるとずいぶん変わります。
秋元 「現代アートみたいな世界があるのね」みたいに思っていた工芸の人達からすると、気がついたらむしろそっちのほうが大きなマーケットで、自分達が未来へ続くと思っていた日本の工芸のマーケットが本当に続くかどうかわからなくなってきている。そういう意味でも、相当変わってきているね。
細尾 北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI」も、相当アートをぶち込んできているな、と思いました。これは秋元さんが仕掛け人というところもあるので(笑)。そういう意味では、やっぱり僕ら工芸の立場からすれば、現代アートとの綱の引き合いというか。自分達に足りなかった価値観や考え方というものは、やっぱり挑戦しないと身につかないなと思っています。現代アートへは、切り口を探しながらどう入って行こうかと……。
秋元 丁寧にやりたいよな。現代アートで出すときは、一発で勝負が決まる。
細尾 そうなんです。1回こけるともうダメだって。そこはグサッと行けるように、タイミングを見極めながら準備しようと思っています。
秋元 期待してます。
おわり