野党共闘との一騎打ちを
自民党が避けたい理由

 まず、大きく苦戦しているのは「都市部」です。ただでさえ、都市部の選挙区はその選挙のときに吹く「風」によって大きく左右されます。

 かつて民主党政権が誕生した際の選挙では、自民党候補は都市部でことごとく吹き飛ばされました。一方、政権交代を許し、下野することを余儀なくされるほどの敗北を喫した状況でも、農村部のガチガチの自民党地盤の地域はビクともしないということも証明されました。

 話を戻しますと、今回の野党共闘で共産党の候補が出馬しないことにより、その票がほぼ全て野党共闘の候補(多くは立憲民主党)に流れるのです。

 そうなると、自民党候補はかなり厳しい戦いを強いられることになります。そもそも、自民党の支持率というのはだいたい40%前後です。裏を返すと、アンチ自民は60%で自民党よりも多いのです。

 たとえていうならば、野球チームでいうところの巨人が自民党で、その他の球団が野党各党だとします。ファンの数でいうと巨人が一番多いと言われていますが、その他の球団が合わさると巨人よりも多くなるというような具合です。野党共闘とはそういうことなのです。

 従って、自民党候補と野党候補の一騎打ちになる選挙区では、自民党候補が大きく敗北するということが現実的に起こってくるのです。都市部はまさに今回その影響を大いに受けているといえるでしょう。

 そこで重要になってくる存在が、野党共闘に加わらない「第三の勢力」です。いわゆる「第三極」という存在で、与党でも野党でもないという位置付けの政党です。以前に存在した「みんなの党」などがそれにあたり、現在も残っているのは日本維新の会だけです。

 現行の選挙制度においては、この第三極が立候補しているか否かでこの勝敗も大きく変わってきます。いわゆる「票割れ」により、維新が出ている選挙区では野党の票を一定数削ってくれるのです。

 第三極の立候補は、当然ながら自民党の票も奪っていくし、場合によっては野党票よりも多くの自民票を奪う場合もあるでしょう。

 しかし、それでいいのです。具体的な数字で説明しましょう。

 自民党vs野党共闘のある選挙区で、たとえば得票率が自民党45%で野党共闘が55%だったとします。そうすると自民党にとって、次に大事なことは、どれくらいの接戦で敗北したのかになります。

 落選した候補者の得票数を当選者の得票数で割った比率を「惜敗率」というのですが、この惜敗率が高ければ高いほど、つまり戦いが接戦であればあるほど、「比例復活」で当選する可能性が高まるのです。

 ちなみに、この例で言うと惜敗率は約82%(45÷55×100)となります。

 一方、自民党vs野党共闘vs第三極(日本維新の会)とした場合、得票率が仮に自民党40%、野党共闘45%、維新15%だったとします。

 すると自民党40%に対して野党共闘が45%なので、惜敗率は約89%(40÷45×100)となるのです。

 自民党の得票率は、「自民党vs野党共闘」で45%、「自民党vs野党共闘vs第三極」で40%と、前者の方が高いですが、惜敗率は後者の方が高いのです。

 繰り返しになりますが、惜敗率が高いほど、比例復活の可能性が高まるので、第三極が候補者を擁立するかどうかというのは、自民党候補者にとっては死活問題になってきます。